【魚卓の浅見卓也さん】お金はなくなっても、人との信頼関係は残されていた
(前回の記事はこちら→魚卓の設立と、裏切り)
――― 信頼していた人に横領されて、1億円の借金を抱えて、お金も持ち逃げされて。それでもやってくる支払いにはどうされたんですか?
浅見 もう最初は頭真っ白でしたね。夜は寝れないし変な汗出るし。
1億円の借金なんてテレビのニュースで聞くような額だから、自分なんかに返せるとは思えませんでした。
とりあえずは差し迫った支払いをどうするか、みんなで話し合いました。
――― とにかく現金が必要ですよね。
浅見 身の回りの売れるものは全部売ったんですけど、全然足りないわけですよね。
で、市場の人とかに、とりあえず話しに行ったんですよ。そうしたら、僕は中卒で働き始めたから、15歳から市場に通ってきたわけじゃないですか。
そういうガキの頃から付き合いがある人たちがみんな、「お金はいつでも良いよ」って言ってくれて。
――― お金はなくなっても、人との信頼関係は残されていたんですね。
浅見 はい。色んな人から「もう一回、また一からやれば良いじゃないか」と。従業員たちは、自分の生活がどうなるかわからないのに、「もう一度頑張りましょう」って言ってくれて。
ある社長さんなんて、突然500万円をポンって貸してくれたりして。「返すのはいつでも良いから」って。
――― 普通なら考えられない話ですね。
浅見 本当にそう思います。あとは付き合いのあった信用金庫さん。事情を話したら、普通じゃ絶対にあり得ない額を貸してくれて。これも本当に助かりました。
他にも感謝してもしきれないことがたくさんあって。本当に困っているときに助けてくれるような、そういう人たちがいなかったらもうダメでした。
その後は返せるところから一万円ずつでも返していって。
――― 浅見さんは、きっとそういう関係ができるような生き方をされてきたんですね。
浅見 いやあ、本当にありがたかったです。
――― その頃、ご家族とはどんな話をされたんですか?
浅見 最初は嫁さんにも言えなくて、ようやく言えたときにはやっぱり泣かれました。小学生の子どももいましたしね。でもその後、嫁さんがお金の管理をやってくれるようになって、それも助けられました。
あとは一つすごかったのが、市場の駐車場でひとり頭抱えて涙流してたら、まだ何も知らないはずのおふくろから電話がかかってきて、「もし何かあるんなら、もう辞めちゃいなさい。うちの家を売ったっていいんだから」と。これはびっくりしましたね。おふくろってすごいなって。
――― 虫の知らせというか。ちなみにその後、Aさんは見つかったんですか?
浅見 弁護士さんにも相談したんですが、「もし探して見つけられて、裁判で勝てたとしても、お金は残ってないだろうから返ってこないだろう」って言われました。
あとは当時お任せしていた税理士さんも結局Aさんとグルだったんですけど、手口が巧妙で戦ってもあまり良いことがなさそうだったので、もう前を向いてやっていくことにしました。
――― 前向きに時間を使っていくことにしたのですね。
浅見 そう。時間がもったいない。
でもね、そうやって前向きに頑張ろうっていうとき、Aさんが逃げた半年後の2011年9月なんですけど、市場に向かうトラックを運転中に、15mの高さから落っこちてしまったんですよ。
(次回につづく→遠回りして、やっとわかる)
▼インタビュー・編集 小野寺将人(Facebook / Twitter)
1986年生まれ。2015年、茅ヶ崎市に移住。「エキウミ」の管理人。住宅・不動産サイト運営会社、お出かけ情報サイト運営会社にて営業・企画職を経た後、現在は総合ポータルサイトにて企画職に従事。ハンドメイドアクセサリーブランドm'no【エムノ】のウェブマーケティングも行う。
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