【魚卓の浅見卓也さん】魚卓の設立と、裏切り
(前回の記事はこちら→中卒の悪ガキ)
――― 魚卓を設立されたときの話を伺えますか。
浅見 当時勤めていた会社に、とにかく売るのがうまいAさんって人がいたんですね。彼は技術面はそうでもないんだけど、何せ売るのがすごい。
それで、僕も推薦してAさんは店長になったんですけど、あるとき周りに何にも言わず会社を辞めちゃったんですよ。
しばらくした頃に市場でたまたまAさんの噂を聞いて、そのあと久々に会えたんですね。そしたらスーツも車も派手で、見るからに羽振りが良い感じで。
――― その時、Aさんとはどんな話をされたんですか?
浅見 会社を黙って辞めちゃってすみませんとか、最近どうしてるのとか。
そしたらいまAさんは人材派遣会社を経営していて、儲けも出てるから、浅見さん何か一緒にやりましょうよって誘われて。
――― それが何歳の頃ですか?
浅見 7年ぐらい前だから…33歳とか34歳あたりですね。ただ僕は魚しか知らないし、経営とかわからないからって言ったんだけど、その辺は任せてくれと。
――― お金まわりの管理やら、設立の登記やらですか。
浅見 そうそう、そういうのは全部Aさんがやるからと。それで、生まれ育った茅ヶ崎で「魚卓」という会社を作った。おかげさまで売上も好調で。
――― 滑り出しは順調だったんですね。
浅見 そう思ってたんですけど、あるときそのAさんから連絡があって、「魚卓が赤字になってる」と。
でもこっちは家賃も仕入れも給料もちゃんと見てるから、赤字に気がつかないわけないんですよ。ましてや現金商売だし。
――― 現場の浅見さんと、Aさんの、お金の計算が合わなかった。
浅見 そう。で、どうもこれはおかしいなと思って、みんなで相談して、パソコンのパスワード破って帳簿見たんですよ。
そしたらまあ案の定というか。Aさんの人材派遣の会社の方の家賃とか、働いてない自分の子どもの給料出したりとか、要はそっちの会社にお金が流れてて。
――― 横領ですね。
浅見 はい。Aさんは遊び方も半端じゃなくて、帯つきの札束を持ってその日に使っちゃうみたいなことがしょっちゅうあった。それも結局は魚卓のお金だったと。
それで色々調べて準備して、いよいよある日Aさんを呼び出して、一体どうなってるんだと言ったんですよ。帳簿がおかしいと。
――― Aさんはどんな反応だったんですか?
浅見 とにかく知らない、わからないって。
で、まあそんな話をしてたら、急に部屋が揺れだして。ちょっと普通じゃない揺れ方だったんですけど、要するにその日はあの震災の日だったんですよ。
――― 東日本大震災のことですか?2011年3月の。
浅見 そうそう。Aさんを問い詰めてたら、急にぐわんぐわん揺れてきて、テレビつけたら東北の津波の映像が出てきて。
――― それは・・・こんな話をしてる場合じゃないって感じになりますね。
浅見 Aさんもしらを切ってるし、その日は一旦解散ってことになったんですけど、結局数日後に会社のお金を全部持って逃げられてしまいました。
知らない間に会社が赤字だし、信頼していた人に裏切られたというだけで相当ショックを受けてるときに、残りのお金も全部持ち出されて。
計算したらいつのまにか1億円以上の借金を抱えていることになっていました。
――― 1億円なんてどうしたら良いか想像もつきません。
浅見 はい。僕もそうでした。そんな状態でも当然、給料日とか月末の支払はやってくるから、もうどうしようもなくなってしまって・・・そこからは地獄のような生活でした。
(次回につづく→お金はなくなっても、人との信頼関係は残されていた)
▼インタビュー・編集 小野寺将人(Facebook / Twitter)
1986年生まれ。2015年、茅ヶ崎市に移住。「エキウミ」の管理人。住宅・不動産サイト運営会社、お出かけ情報サイト運営会社にて営業・企画職を経た後、現在は総合ポータルサイトにて企画職に従事。ハンドメイドアクセサリーブランドm'no【エムノ】のウェブマーケティングも行う。
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