【茅ヶ崎市の佐藤光市長】「茅ヶ崎だけに閉じる必要はない。」 湘南×バリアバリューという考え方。
これまでエキウミでは茅ヶ崎市役所に勤める方々にもインタビューをしてきました。今回は、そのトップである佐藤光市長にお話を伺いました。県議会議員として長年ご活躍された佐藤光市長らしいお考えがよくわかる内容となっていますので、ぜひ最後までお読みください。(全2回)
■バリアバリューで「歩きたくなる道」へ
――― 本日は雄三通りにある「東海岸商店会」会長の長谷川さんも交え、佐藤市長のお話を伺っていきたいと思います。
佐藤 はい、よろしくお願いします。
長谷川 まずこのインタビューが載る「エキウミ」というサイトについて説明しますね。
これまで雄三通りを良くしていくために「雄三通りスマイルプロジェクト」という活動をしていて、その内容をいろんな方に知ってもらいたいというところで「エキウミ」っていうサイトを作ったんです。
↓雄三通りスマイルプロジェクトの活動
佐藤 そうなんだ。
長谷川 それで、これからも雄三通りでいろいろ仕掛けていきたいんですけども、まあやっぱりその中で「この通りの交通はちょっと危ないよね」というのもあったりで。
佐藤 まあ、そうだよね。
長谷川 過去に一方通行の社会実験をやったけども頓挫しちゃったじゃないですか。
もうあれから10年も経っているから、改めて雄三通りの安全安心を考えていきたいね、と。その中で、茅ヶ崎市の長である佐藤市長ともお話ができればと思ってきたんです。
――― その雄三通りについて佐藤市長のご意見を伺いたいのですが、いまの話についてどんなことを思われますか。
佐藤 雄三通りってまさに、茅ヶ崎駅を降りて最初に目の前に出てくるまさにメイン通りじゃないですか。
だからその通りを利用される多くの方々や、ご商売をされている皆さんがどうしたいのかが一番大事だと思います。
大体、ご存知の通り行政が一方的に「こうしよう!」というと失敗するもんで…。
―――(笑)
佐藤 そう思うでしょう?(笑)
ただおっしゃる通り安全な道にしなきゃいけないのは、大きな課題ですよね。
あの道幅で車椅子の方を見かけたとき、こっちがハラハラしちゃうときが実際ありますから、そういうところはちゃんとしなきゃいけない。
――― どう改善していったら良いでしょうか。
佐藤 「バリアバリュー」という言葉をご存知ですか?
障害をお持ちの方や、高齢者の方にどうバリューを発揮していただくかを考えていくことなんですけども、この考え方はヒントになると思っていて。
――― バリア(障害)を、バリュー(価値)にする。
佐藤 そう。茅ヶ崎の65歳以上は26%で今後も増える傾向にあるんですけど、別にそれは悪い事ばかりではない。
皆さんがもっと表に出て活動できるようになれば、雄三通りでお買い物をしてくれるかもしれないし、お茶の一杯でも、アイスクリーム1個でも買ってくれるかも知れないじゃないですか。
――― どうしたら外に出てもらえるかを考えるということですね。
佐藤 高齢者の方や障害者の方も表に出やすい街、茅ヶ崎はそれを目指していきたいと思っています。
だから、長谷川さんのプレンティーズの前にベンチがあるでしょう?ああいうちょっとベンチに腰かけて一休みする余裕のある空間って最高にいいと思うんですよ。
長谷川 ありがとうございます。あそこは幅があって「溜まり」がつくれるので、ベンチが置けていますね。
佐藤 そういう溜まれる場所をつくって、高齢者の方とか障害をお持ちの方が、もうちょっと歩きやすい街、歩きたくなる商店街にしていきたいですよね。
――― そのお話は小さなお子さんを連れた方にも当てはまるお話ですね。実はその「歩きたくなる」道というのを雄三通りスマイルプロジェクトでも掲げていて、その目指す世界観の絵の中にはベビーカーを押す方やご高齢の方、車椅子の方なども入れているんです。
↓雄三通りスマイルプロジェクトが目指す世界観(ぜひズームして細かく見てみてください)
佐藤 へーこれいいですね!
長谷川 この海辺がテーマパークっぽいのは、あくまでも賑やかなイメージということで見てもらえれば良いんですけど(笑)
ただやっぱりこの絵のように雄三通りにちゃんと歩道があって、いろんな方が歩きたくなる通りにしていきたいんです。
佐藤 うん、うん。
■道路行政は「面」で考える
――― この絵では、ラチエン通りのように中央線をなくして車が気を付けて走るような形にすることを提案していて、そうすることで歩道がつくれれば「バリアバリュー」が発揮しやすいのかな、と思うんですけれども。
佐藤 そうですね。
長谷川 雄三通りと交差する鉄砲道はベンチが出来たりして、きれいになってるじゃないですか。
その辺とうまく合わせてこう、一緒になにかできるといいのにな、と思うんですよね。
街全体のグランドプランがあって、そのなかで雄三通りを面白くしていくっていうことができたら一番良いなと。
佐藤 その話を聞いて思い出したんだけど、私が県議会議員になったとき「茅ヶ崎の道路事情をこうしてくれ」って要望を出していたんですね。
そしたら担当部署のコワモテの部長さんが、グイっと顔覗いてきて。
「あのなあ…先生よう」って
――― 怖い(笑)
佐藤 「そんなこと言うけどよう、道路行政っつうのは点で考えるんじゃないんだよ。面で考えるんだよ」って言われたんですね。
これはまさにいま長谷川さんが言ったことで、雄三通りもまず面で見なきゃいけない。
雄三通りや鉄砲道、その周りの道路、茅ヶ崎全体がどうなるのかっていうのを、みんなで考えたいですね。
長谷川 ぜひ。雄三通りだけが良くなっても仕方がなくて、茅ヶ崎全体として茅ヶ崎らしさを出していきたい。
その上で、雄三通りをその基点にしていきたいです。
佐藤 それ、ぜひやっていきましょう。
要望がまとまったら、雄三通りは県道なので県との交渉が必要になってきます。
その窓口はこれまで県議会議員をしてきた私がやりますよ。
■観光とバリアバリュー
――― とても頼もしいお言葉をいただけたので、別の視点として観光のお話も伺います。雄三通りは駅前で観光客も通る道ですが、茅ヶ崎の観光についてどうお考えですか。
佐藤 実は茅ヶ崎の観光振興ビジョンには「100万人が1回だけ訪れるのではなく、1万人が100回訪れるまち」っていうことが書いてあって、これすごくいいなって思っているんです。
では同じ人に100回来てもらうにはどうしたらいいのか? 私の考えとしては、茅ヶ崎に閉じて考える必要があるとは思っていないんです。
――― 茅ヶ崎に閉じないやり方ですか。
佐藤 そう。お隣の藤沢市や、平塚市や、寒川町を巻き込んでいくやり方もある。
長谷川 それは本当にその通りだと思っていて、この間びっくりしたのがプレンティーズに若い女性5人のお客さまがママチャリでぴゅ―っと来たんですよ。
佐藤 うん。
長谷川 関西弁だったので「どっから来たの?」「大阪から」って。
「じゃあこの自転車はどっから来たの?」「由比ガ浜から」って言うんですよ。
――― 由比ガ浜からママチャリで茅ヶ崎まで…!
佐藤 すごいねぇ(笑)
長谷川 ここに住んでいると考えにくいんですけど、外から来る方はまるっと「湘南エリア」として見ているから、そういうことがあり得るんですよ。
だから近隣の市町と連携して、みんなで湘南エリアを盛り上げていくことを仕掛けていかないともったいないなって。
佐藤 そうそう、広域的な感覚で考えたいよね。
例えば藤沢の市長さんは県議会議員時代の仲間なのですぐに話しができるんですよ。
観光客を取り合うんじゃなくて、同じエリアの仲間として一緒にやっていきたい。
――― それもぜひ進めたいですね。
佐藤 茅ヶ崎に来てもらった方に、江の島を見に行ってもらうなり、寒川神社に行ってもらうなりしても良いじゃないですか。
逆に藤沢や寒川に来た人たちが、今度は茅ヶ崎に来てくれるかも知れない。
1万人に「また来よう」って思ってもらうには、そういう考え方をしていかないといけないんじゃないかなと思うんですよね。
長谷川 そういった意味ではハワイのパークアンドライド(※)ってあるじゃないですか。
(※自家用車で近くまで行き、バスや鉄道を利用して目的地をまわるシステム)
あれを134号線で回したら面白いと思うんすよね。
佐藤 うん、うん。
長谷川 鎌倉とか江の島とかは横方面にバスを動かして、寒川神社なら縦方向にバスを動かして。
そうすると観光で来た方はいろいろ動けて楽しめるじゃないですか。
佐藤 あとはさっきのママチャリの話じゃないけど、自転車で市をまたいだシェアサイクルがあっても良いよね。
実は二人乗り自転車っていうのも面白いと思っていて…
長谷川 ああ!タンデム。やっぱいいですよね。
佐藤 そう、二人でこぐタイプの。
あれがいま47都道府県のうち半分ぐらいは公道を走るのを許可してるんですよ。
――― 神奈川はダメなんですね。
佐藤 実はこれに興味を示しているのが、視覚障害者の方なんです。
健常者と一緒に自転車に乗ることができれば、海の風や音を通じて湘南を肌で感じることができる。
海沿いを自転車で走ると気持ちいいじゃないですか。
こういうことも湘南エリアとして一協力してやっていきたいですね。
――― 障害者に優しい街というのは、健常者にも優しい街ということになりますよね。茅ヶ崎や湘南が「バリアバリュー」の代表的なエリアになっていったらすごく良いと思いました。次回は、佐藤市長が政治の世界に入られた経緯や市長になられてからのことを伺いたいと思います。
(次回につづく → 「既定路線は選ばない。」茅ヶ崎市を改革する市長。)
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▼インタビュー・編集 小野寺将人(Blog / Facebook / Twitter)
2015年に茅ヶ崎市に移住し、2017年に「エキウミ」を立ち上げる。東海岸商店会の公式サイトの運営や、アクセサリーブランドm'no【エムノ】のウェブマーケティング、記事の寄稿も行う(SUUMOタウン「まだ茅ヶ崎に行ったことのないあなたへ」)。
▼編集アシスタント 和田香世
フリーランスライター。1970年生まれ。東京都出身。2015年、茅ケ崎市へ移住。約20年間報道の現場で培った経験を地域メディアに活かしたいと思い、2019年から参加。
▼動画編集 野口裕貴
「エキウミ」の動画・文章編集班。Web関連企業にてエンジニアとして従事。技術講師として教育事業も行う。現在は都内在住だが、何らかの形で茅ヶ崎に拠点を置きたいと思っている。
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