【テクニカルライターの大重美幸さん】街を面白くするコンテンツが、自発的に生まれる仕組み。
茅ヶ崎にいるWEBやITの業界に関わる方にお話を伺う「ちがさきのIT界隈」。今回ご登場をいただくのはテクニカルライターの大重美幸さんです。現在までにプログラミング言語を中心として74冊もの本を生み出してきた大重さんのお話を、ぜひ最後までお読みください。(全3話)
■テクニカルライター大重美幸
――― 本日はよろしくお願いします。
大重 よろしくお願いします。
――― まずは大重さんのご活動について伺えますか。
大重 ぼくは本を書くのが仕事なんですけども、プログラム言語の紹介が多いので「テクニカルライター」というのがわかりやすいですね。
――― どんなプログラミング言語を扱っていますか。
大重 たとえばiPhoneアプリをつくるときに使うSwift(スウィフト)言語の入門書だったり、AI分野で注目されているPython(パイソン)や、Webアプリをつくるときに使うPHP(ピーエイチピー)などがあります。
――― これまでに何冊ぐらい書かれてきたのでしょうか。
大重 30歳から書き始めて、合計すると74冊です。
こういう本は寿命が短めということもあり、毎年2~3冊ペースで出していますね。
■AR(拡張現実)と観光
――― 大重さんのSwiftの本を拝見しましたが、AR(拡張現実)についても多く扱われていますよね。
大重 そうですね。ぼくはARの可能性というのはすごくあると思っているんですね。
たとえば道を歩いているとき、なにか知らないことに出会ったらネットで検索することあるじゃないですか。
――― 「ここってなんのお店だろう?」とか。
大重 そうそう。それって、いまだとスマホを取り出して、検索する言葉を入れて、答えを探さなきゃいけないんだけども、ARが普及すればもっと簡単に知ることができるかも知れないですよね。
道を歩いているだけで、Apple Watchにポンポン情報が出てくるとか。
――― よく映画なんかでも、かけているメガネに情報が表示されたりしますよね。
大重 そう。まさにそういう世界観ですね。
ARはすでにあるものに対して情報を付加していくので、作りこみが必要なVR(仮想現実)なんかと比べてもローコストで実現できるんです。
――― いま街歩きの例をお話されましたが、観光施策なんかにも使えそうですね。
大重 ぼくはある地域の観光の仕事に関わったことがあるんですけども、観光客がその名所を歩くことでいろんな情報がキャッチできる仕掛けを用意したんですね。
――― 面白そうですね。
大重 こういうのは最初に頑張って作りこみすぎてしまって、スタートしたらほったらかしになっちゃうことが多いんです。
だから最初に間違っちゃうとずっとダメだし、最初良くてもアップデートしないと飽きられちゃう。
つまり、最初からアップデートできる設計にしておかないと、挽回できないんですよね。
■フックを用意する
――― いまのお話とも通じますが、エキウミの拠点である茅ヶ崎の雄三通りを盛り上げる、大重さんのアイディアをいただけますか。
大重 先ほどのARなんかを活かした街の活性化のヒントになるのは、ギネスブックのような仕組みだと思うんですね。
――― 世界一を認定する、あのギネスブックですか。
大重 そう。あれって一定の認定ルールはあるものの、あとはなんでもアリじゃないですか(笑)
挑戦の幅が広いので、こんなことまで認定されているのかっていうのがたくさんある。
――― つまり、認定ルールだけ決めて、あとは利用者側の発想にゆだねる仕組みが良いということですね。
大重 それこそ雄三通りを歩いているときに、ある店の前を通ったら「この店には雄三通りで一番足の速い鈴木さんがいます」みたいな情報がポンと入ってきたら、それは面白いコンテンツになり得ると思うんですね(笑)
Wikipediaなんかを見ていても、なぜそこまでニッチな情報があるんだろうということが載っていますけども、だれがどんな情報を面白いと思うかは最初から決めつけない方が良い。
どこにフックがあるかわからないじゃないですか。
――― すごくインターネット的な発想で面白いです。
大重 最初にブログが流行ったころ、よくアクセスカウンターが設置されていたじゃないですか。
そうすると「キリバン」っていう概念が生まれて、1,000とか5,000とかキリの良い番号に当たると「おめでとうございます!」みたいなことがある。
同じように雄三通りのどこかにボタンを設置して、通行人が押すとカウントが上がっていく仕掛けがあったら、なにかドラマが生まれるかもしれないじゃないですか(笑)
――― キリバンが近くなったらお目当ての数字を狙い始める人が現れそう(笑)
大重 そうそう。あとは店の前に空き缶を立てておいて、誰かが店主の目を盗んでそれを蹴る。
それを店主が「ちくしょう、まただれか倒しやがったなまったく…」とか言いながら直すけど、いつのまにか蹴られて、また店主が直して、というエンドレス缶けりをやってみるとか。
――― いつのまにか店主攻略サイトが立ち上がるかも知れませんね…(笑)
大重 つまりね、そういうなんでもない仕掛けがコンテンツになり得るということなんです。
最初から決めつけて作りこみすぎるのではなく、なにかフックをつくっておくことでコンテンツが生まれていく。
だれがどのフックに引っかかるかはわからないけど、引っかかるためのフックはたくさん用意しておくとなにかコンテンツに昇華されるかも知れません。
――― だんだん大重さんの考え方がわかってきました。
大重 なぜこういう形が良いかというと、たとえば「雄三通り」から発想しようとすると加山雄三さんにひっぱられた企画になっちゃうじゃないですか。
魅力的なネタがあればあるほど、企画もそこに引っ張られちゃって、加山雄三さんに興味がない人には届きにくくなってしまう。
そうじゃなくて、コンテンツが自然発生する仕組みだけを用意しておくことでコンテンツが自発的に生まれていくと、雄三通りや街がもっと面白くなると思いますよ。
――― すごく興味深いお話でした。次回は大重さんがどのようにしてテクニカルライターになったのかを伺います。
(次回につづく → ネットワークの時代の変遷を見てきた)
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▼インタビュー・編集 小野寺将人(Blog / Facebook / Twitter)
2015年に茅ヶ崎市に移住し、2017年に「エキウミ」を立ち上げる。東海岸商店会の公式サイトの運営や、アクセサリーブランドm'no【エムノ】のウェブマーケティング、記事の寄稿も行う(SUUMOタウン「まだ茅ヶ崎に行ったことのないあなたへ」)。
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