コミュニティを熟知した田村健太郎が仕掛ける次の一手。地域にファンコミュニティを生み出すアプリ「mint」。
(前回の記事はこちら → 「コミュニティの熱狂構造」とは。オンラインサロンプラットフォームを創った起業家・田村健太郎。)
■だれでも通貨的なものはつくれる
――― 田村さんは2018年に、オリジナルのポイントが作れる&もらえるアプリ「mint」をリリースされました。前回の「コミュニティの熱狂構造」の話を絡めつつご紹介いただけますか。
田村 mintの話の前に、すこし話は飛びますが、数年前から「ブロックチェーン」って話題になっているじゃないですか。
――― はい、話題になっていますね。
田村 アレのなにがすごいかって、「だれでも通貨的なものはつくれる」ということを皆が気づいたことだと思うんです。
――― たしかに、そういう認識が浸透し始めたのは最近のことですよね。
田村 これまでは一万円札のように国が発行していたり、あるいはTポイントのように大手企業が発行することでしか「通貨的なもの」はつくれないと思われていましたよね。
でも冷静に考えると、やろうと思えばだれでも「通貨的なもの」は発行できるんです。
――― 要は「その通貨的なものに価値があると信用されていれば、通貨的な役割を果たせる」という話ですね。
田村 そうです。ただ、いま大手企業が発行するポイントって、1ポイント発行するのに3円ぐらいコストがかかると言われているんですね。
かつ配ったものが自分のところに帰ってくるかもわからないし、情報も大して取れない。
そうなると結局コストがかかる割に、CRM(顧客関係管理)的なことができてないと。
―――現状のポイントシステムは課題が多いんですね。
田村 かたや中国なんかは、「WeChatpay」でQRコード決済をしたら、データに基づいてPUSHができるし、対面で決済をするときは、相手の特定ができて適切なサービスを提供できるわけです。
これは「アリペイ」も同じですし、インドなら「Paytm」がそうですと。
――― 最近になって日本にもキャッシュレスの流れが来始めていますね。
田村 QRコード決済領域ではPayPayが話題になったり、LINE PAYがLINE@との連携をはじめています。
注意しておきたいのは、スマートに決済ができること自体が本質ではないんですよ。
お店で買い物をしたお客さんを、オンラインでトラッキングできるようになったことが本質なんですね。
――― リアルの購買データが使えるとなると、すごいことになりそうです。いつか日本も中国やインドのようになるのでしょうか。
田村 それはまだ誰にもわからなくて、WeChatpay×アリペイ戦争みたいなことがこれから起きるかも知れないし、起きないかも知れない。
そういう状況を踏まえ、ではmintとしてどのような役割を持つのかという話だと思っています。
■地域コミュニティ×mint
――― mintの紹介ページには、「ポイントが作れる&もらえるアプリ」と書いてありますね。
田村 はい。mintは低コストで通貨的なもの、つまりポイントが無料で発行できるサービスです。
まだリリースしたばかりなので、ぜひ茅ヶ崎の東海岸商店会さんにモデルケースになっていただきたいと考えています。
――― 商店街がこれを導入するとどんなメリットがあるのでしょうか。
田村 こちらはただポイントを発行できるだけのサービスではなく、ポイントをフックにファンコミュニティを育てることができるサービスです。
人が商品を「ここで買いたい!」と思うときって、ただ近いから、ただ安いから、だけでなく、「誰々さんがそこにいるから」とか「誰々さんがおすすめしているから」という理由って強いじゃないですか。
――― たしかに、「人」が動機になることはよくあります。
田村 ですよね。つまり、お店のファンにお店のことを広めてもらう方法が効果的なわけです。
ファンの応援が昔以上に重要になってきているなかで、それを実現させる手段として、mintというサービスができたんです。
――― ただ、来店ポイントぐらいの話だとファンコミュニティを育てることにはならないですよね。
田村 おっしゃる通りです。
重要なのは、ファンの皆さんにやって欲しいことを明示することなんですね。
例えば今回お邪魔している東海岸商店会さんであれば、「 #東海岸商店会 というハッシュタグを付けて写真を投稿してください」とお願いするとか、あるいは友だちに招待状を送ってもらうとか、お店のレビューを書くようにお願いするとか。
――― なにかお願いをすることが重要。
田村 はい。お願いをして、それを叶えてあげたら、報酬としてのポイントがもらえる。
そのポイントをためると、さらにファンコミュニティの一員になれるような特典がもらえる。
そういうサイクルが生まれるような設計にしているんです。
――― 前回の、オンラインサロンが熱狂的なコミュニティを生む構造と同じですね。
田村 まさに、まったく同じ話です。
それをできるだけお店の方のオペレーションが必要ない形で実現します。
例えばハッシュタグ付きのTwitter投稿ならば、mintは自動ポイント付与をしてくれます。
――― お店の方がいちいち検索して確かめなくて良いんですね。
田村 はい。というのも、なかなかエゴサーチって皆さんしないんですよ。
すこし話はズレますが、例えばクラウドファンディングでお金を出してくれた人がツイートしていたときに、募集側がいいね一つしないことが本当に多いんです。
それってすごい機会損失で、なんならその「いいね」が欲しいからお金を出してる部分もあるのに、一方通行にしちゃっているんですよね。
――― サービスを買うこと以上に、「いいね」が欲しいと。
田村 アイドルのファンがCDを大量に買うのも同じ話で。
なかなか普通に生きていて、貢献していることを感じられる瞬間って実は多くないとおもんです。
そして貢献に対する報酬として人が求めているのは「承認」や「居場所」なんです。
――― 居場所が多いほど人は幸せになると聞いたことがあります。
田村 職場にしか居場所がない人が、仕事がうまくいかなかったときってつらいじゃないですか。
例えばこのmintを商店街で活用することで、地域の人たちが商店街を居場所と感じられるようなことが実現できたら良いと思うんです。
■ビジネスとしてのmint
――― 競合サービスはどこだと考えていらっしゃいますか。
田村 先ほども触れましたが、LINE PAYとLINE@が繋がりますよね。
あれがもう何段階か進むとおそらくグループ単位で使うようなことも考えられていると思うので、それは競合になっていく可能性はあります。
――― なるほど。
田村 あとは同じくQRコード決済領域のPayPay、メルペイ、楽天ペイあたりも今後の動き次第かなと。
ただしQRコード決済がどこまで普及するかという話だったりもするので、そこは状況次第ですね。
やっぱり現金だよね、Suicaだよねという意見もまだ根強いですから。
――― はい。
田村 キャッシュレスについては、国レベルの話であれば一番効果があるのは一万円札を廃止しちゃうことですよね。
現金を使いづらくしちゃう。
――― それはすごいですね。
田村 実は高額紙幣の廃止はインドでもやっていて、もはや世界の流れと言えます。
万札や五千円札をなくすと、世界はガラッと変わりますよ。
――― やはり田村さんは業界を変えてやろうみたいな想いはあるのでしょうか。
田村 シンプルに、いまよりも便利な世の中にはしたいですよね。
中国やインドの事例を見ていれば割と確定的な未来は見えているわけですから、それをスタートアップとしてどう登っていくかだと思っていて。
いまはこうして茅ヶ崎や各地域をまわって、一人ひとりにお話をすることで理解者を増やしていくことが大事だと思っています。
――― よくわかりました。次回は茅ヶ崎の東海岸商店会の会長であるプレンティーズの代表、長谷川裕さんを交えてディスカッションしたいと思います。
(次回につづく → 頑張っている商店街が報われる社会へ。茅ヶ崎の東海岸商店会とmintの挑戦。)
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【EKIUMI SPECIAL TALK】MINTの田村健太郎さん
・第1話 「コミュニティの熱狂構造」とは。オンラインサロンプラットフォームを創った起業家・田村健太郎。
・第2話 コミュニティを熟知した田村健太郎が仕掛ける次の一手。地域にファンコミュニティを生み出すアプリ「mint」。
・第3話 頑張っている商店街が報われる社会へ。茅ヶ崎の東海岸商店会とmintの挑戦。
▼インタビュー・編集 小野寺将人(Blog / Facebook / Twitter)
2015年に茅ヶ崎市に移住し、2017年に「エキウミ」を立ち上げる。東海岸商店会の公式サイトの運営や、アクセサリーブランドm'no【エムノ】のウェブマーケティング、記事の寄稿も行う(SUUMOタウン「まだ茅ヶ崎に行ったことのないあなたへ」)。
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