【ホルグの加藤年紀さん】全国1788の地方自治体にノウハウを届けたい。地方公務員オンラインサロンという仕組み。

(前回の記事はこちら→自分はまったく世の中の役に立っていないんじゃないか


■地方公務員オンラインサロン


――― 加藤さんはこれまで地方自治体を応援するメディア「Heroes of Local Government(以下、HOLG)」を2年半運営されてきました。今後の展開を教えていただけますか。


加藤 2年半続けてきた中で、多くの活躍する公務員の皆さんとつながることができました。

そこでふと思いついたのが、このつながりというのはかなりの価値があるんじゃないかということです。


――― どんな価値でしょうか。


加藤 つまり、そういう人たちと交流したいとか、学びを得たいと思う地方公務員の皆さんが大勢いるんです。

以前、地方公務員の勉強会に呼んでいただき長崎県の平戸市に行ったときにそれを痛感しまして。


――― 平戸市は長崎県の最西端にある市ですね。


加藤 はい。その日は土日だったんですけど、そこに地方公務員が100人ぐらい集まっていて、6割が県外の人だったんですね。


――― はるばる県をまたいで。


加藤 そうなんです。しかもその中の4人は北海道の名寄市という、旭川から北に80 kmにあるところから往復20時間かけていらしていたんです。

「10万円弱かけて来た」って。


――― それはすごいですね。


加藤 それで、彼らの存在の裏には、来たくても来れていない人が大勢いるはずだと思ったんです。

そういう人達がお金や時間や場所にとらわれないで勉強会に参加できる仕組みが求められているはずだと。

その答えの一つが、オンラインサロン(インターネット上の月額会費制コミュニティ)じゃないかと思いまして、「地方公務員オンラインサロン」というものを作ることにしました。



――― たしかに、オンラインサロンであれば全国どこからでも気軽に参加ができます。


加藤 地方公務員オンラインサロンでは色々な業界の著名人や、これまでHOLGに出ていただいたスーパー公務員や市長の方々にセミナーをしていただきます。

また、地方公務員に限定して、やる気のある人同士が交流できたりするというところが価値になると思っています。


――― 前々回、「地方自治体は出る杭が打たれる環境」というお話がありましたが、やる気のある人たちが集まるオンラインサロンであればそういうことはなさそうですね。


加藤 はい。それぞれの組織の中で、頑張るからこそ傷つくこともあるじゃないですか。HOLGはその出る杭の人たちを紹介し評価するということを続けてきましたが、地方公務員オンラインサロンがさらに出る杭を伸ばす場になればと思っています。


―――とても納得感がありますし、加藤さんでなければできないことだと思います。


■地方自治体は各地域において独占組織


加藤 あともう一つこの地方公務員とオンラインサロンの親和性が高いと思っている要素があります。


――― なんでしょうか。


加藤 それは地方自治体というのは「各地域において独占組織」だということなんですね。


――― 各地域において独占組織。


加藤 たとえば茅ヶ崎市役所で水道のことを管轄している部署があったとき、その仕事って他の組織が奪うことはできませんよね。

この独占状態が全国の各地域で行われているということです。


――― たしかにそうですね。


加藤 つまり同じような仕事を全国各地の自治体がそれぞれ行っているけど、そこに競争は発生していない。

ということは、お互いにノウハウを教えたりできるわけです。

実際に自治体同士でそういう情報交換がよく行われるんですけど、県をまたいで行われることはあまりありません。



――― たしかに、民間企業だとノウハウの共有には限りがあります。


加藤 とある地方自治体のノウハウが、オンラインサロンを通じて別の地方自治体に共有されるとしたら、すごく価値があると思うんですよね。

しかも地方公務員オンラインサロンには出る杭を打つ文化がないので、やる気を持続できます。


■様々な地方公務員とって価値のある場にする


――― 他にも地方公務員オンラインサロンに入るメリットはありますか。


加藤 僕は大手WEBメディアに記事を書かせていただいているんですけども、オンラインサロンに入っていただいた方にはそういったメディアに寄稿できる機会も用意しています。


――― 地方公務員が大手WEBメディアに記事を寄稿できる。


加藤 そうですね。これは僕自身がかつて「地方公務員の顔が見えない」と思っていたことが原体験としてあるんですけども、やっぱりもっと表に出た方が良いと思っていて。

地方自治体って地域で生活をする上で欠かせない存在ですから、どういう人がいて、どんな仕事をしているのかを知ることにはすごく価値があるはずなんです。


――― そうですね。


加藤 公務員って不祥事のタイミングばかりでニュースに出てしまうので、マイナスイメージがついていますよね。

もちろんマスメディアの監視というのは必要だと思っていますが、行政から見える景色や地域に貢献できる先進事例を、地方公務員から発信する機会があった方が良いと思っています。


――― たしかにそうですね。あと、よくオンラインサロンだと参加者同士でグループをつくったりするじゃないですか。そういうことは考えていますか。


加藤 そうですね。地方公務員ってその地域のおいしい飲食店をよく知っているので、そういう情報交換が気軽にできるグループがあっても良いですよね。

例えば北海道出張のときに気軽に質問してみて、信頼できる地元民のおすすめグルメ情報が聞けたら楽しいじゃないですか

僕は運営者ですけど、そうやって使わせてもらおうかなと思っています(笑)



加藤 地方公務員オンラインサロンでは、自分が本気でなにかやりたければガチで行ってもいいし、時にはゆるく「美味しいもの教えてください」でもいい。

そういう幅を持って、他者を否定しない。

それぞれにとって価値のある場になったら良いと思います。


■町村の地方公務員に届けたい


――― 地方公務員オンラインサロンはどれぐらいの規模にしたいですか。


加藤 全国には約92万人の地方自治体職員(一般行政職員)がいるんですけど、その1%ぐらいは到達したいですね。


――― 9千人規模ですか。オンラインサロンでその規模となると、相当高い目標ですね。


加藤 でもそれぐらいにならないと及ぼせる影響力は小さいですし、どうにか届かせたいです。

目標設定って「実現可能性」と「達成した時の価値」という狭間で決めていくべきだと思うんですけれども、それを考えたとき9千人だったら自分の中で低いほうです。

時間はかかると思いますけど(笑)



加藤 あと数値目標としてはもう一つ考えていることがあって、全国1788の地方自治体から最低一人は入って来てもらえたらすごく嬉しいなっていうのはあります。

この仕組みは勉強会などに参加できない町村の職員にも気軽に参加できるように設計しているところがあるんですね。

町村の地方公務員って一人の人がいろんな仕事を兼任でやっているんですよ。

組織が大きくなるとそれがどんどん分業化されていくんですけど、町村の人ってそれを一人で回さなければいけないから精神的にも負荷がかかるし、広い領域で専門性を深堀りしなければいけない。

でも、ちょっと外に勉強に行こうにも、交通網的に費用や時間の負担がすごく大きいじゃないですか。


――― たしかに町村の場合は学ぶ機会が少なそうですね。


加藤 そういう人たちの家にインターネットさえつないであれば、その機会格差を埋められると思うんです。

ですから、全国1788の地方自治体から最低一人は入ってもらうというのを目指したいですね。


――― とても夢のあるお話でした。応援していますので頑張ってください。インタビューは以上です。ありがとうございました。


(おしまい)


※地方公務員オンラインサロンの詳しい情報はこちらをご覧ください。


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▼インタビュー・編集 小野寺将人(Blog / Facebook / Twitter

2015年、茅ヶ崎市に移住。「エキウミ」の管理人。住宅・不動産サイト運営会社、お出かけ情報サイト運営会社にて営業・企画職を経た後、現在は総合ポータルサイトにて企画職に従事。東海岸商店会の公式サイトの運営や、ハンドメイドアクセサリーブランドm'no【エムノ】のウェブマーケティングも行う。


▼編集アシスタント 堀達也(Facebook

1987年生まれ。平塚在住。2018年よりエキつくに参加 。大学卒業後、社会保険労務士事務所を経て藤沢の企業で総務経理として裏から支える仕事に従事。休日はホームページ制作のボランティアをしたり、パン屋巡りをしたり。カレーパン大好き。美味しいカレーパンを与えるとすぐになつく…かも。

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