【ホルグの加藤年紀さん】自分はまったく世の中の役に立っていないんじゃないか
(前回の記事はこちら→出る杭が打たれる環境で成果を出す人とは。スーパー公務員の共通点。)
■公務員に顔があることを認識した
――― 加藤さんは地方自治体を応援するメディア「Heroes of Local Government(以下、HOLG)」を運営されていますが、なぜこれを始めようと思ったのでしょうか。
加藤 いきなりですけど、普段の生活で地方公務員ってほとんど会わなくないですか?
――― 会わないですね。
加藤 僕もそうで、もともとは地方公務員の存在について気にかけたこともなかった。
でもあるとき高野誠鮮さんという方が書いた「ローマ法王に米を食べさせた男」という本を読んで、その存在を強烈に意識したんです。
――― 私も読みましたが、地方公務員が地元の米をローマ法王に献上するというすごいお話でした。
加藤 変な言い方になりますけど、そのときに顔の見えなかった公務員に顔があることを認識しました。
そして他にも多くの活躍する公務員が存在していると想像したとき、もっと知りたいし知らせたいと思ったんですよね。
■儲からないけど変えたら貢献度が高いところ
――― 加藤さんはそれまで会社員をされていましたよね。
加藤 はい。株式会社LIFULLという不動産ポータルサイトを運営する会社にいたんですけど、最後はインドネシア子会社の立ち上げと経営をしていました。
――― 子会社の社長という地位を捨ててまで、地方自治体を応援したかったのですか。
加藤 要は僕のリソースをどこにあてたら一番社会にとって良いかという話だと思っていて。
放っておいても他の人がやるような儲かる分野は僕がやる必要がないじゃないですか。
だから僕が関わるべきなのは儲からなくても社会を良くする可能性を持つ分野だと思っていました。
そういう領域を探した結果、それが僕の中では地方自治体だったということです。
――― 儲からないけど、可能性があるのが地方自治体。
加藤 はい。実はHOLGを考えつく前に、儲かりそうなHR系のクラウド管理システム事業での起業を考えていたんですね。
事業計画を作ったら儲かりそうだったし、実際に同じビジネスモデルで他の人が最近始めたんですけど、VCから資金調達もして拡大しています。
でもあるとき、自分の作った事業計画を見直したとき、全然モチベーションが上がらなかったんですよね。
――― 全然ですか。
加藤 はい。なんでだろうって考えたとき、これは自分がやらなくても一定数の人がやる予感があって、つまり、代替性のあるものだと思いました。
その領域の中で自分が勝つか、相手が勝つかという話になる。
自分が勝っても負けても、ある程度類似したサービスが残るのであれば、自分が世の中に貢献できるイメージがあまり湧かなくて。
――― ええ。
加藤 その後「地方自治体を応援する」というテーマが見つかったときは、すごくモチベーションが高まったんです。
全然儲かるイメージが湧かなかったのでたぶん誰もやらない。
でも、地方公務員は全国に存在していて、彼らの存在は全国隅々までインパクトがありますから。
■自分はまったく世の中の役に立っていないんじゃないか
――― その儲かるイメージがわかないところで事業をすることに不安はありませんでしたか。
加藤 なんていうか、二つの考えが交錯していました。
ひとつは民間企業にいたときに稼ぐのが得意だったので、マネタイズはなんとかなるだろうという確信めいたものがありました。
だから精神的には安定している時期の方が多かったですね。
――― ビジネスとしてはいつかなんとかなるだろうと。
加藤 はい。ただもう一つあったのは、ビジネスモデルの不安というよりかは、「個人がまったく稼いでないこと」=「人間的な価値がない」という感覚に陥るときがあって。
――― 稼いでない人には価値がないと。
加藤 別に給料が多いかどうかなんて絶対的な人の価値じゃないし、僕は比較的フラットにそこを捉えている方だと自覚しているんですね。
たださすがに1年半ぐらい経ったとき、依然として微々たる給料で日々動いているとなると、なんか「自分はまったく世の中の役に立っていないんじゃないか」っていう感覚に襲われたりもしました。
――― それはつらいですね。
加藤 お金を稼ぐ人が偉いとかすごいとか、そういう世間の価値観に引き寄せられそうになる瞬間はたまにありましたね。
それでも目的をブラさずに2年半ほどやってきた中で、自分がお金の代わりに築いてきた価値に気がついたんですね。
その価値をもとに2019年の1月から新しくはじめる取り組みが一つ突破口になる気はしていて、それはワクワクしています。
――― では、次回はその新しいことについて伺いたいと思います。
(次回につづく→全国1788の地方自治体にノウハウを届けたい。地方公務員オンラインサロンという仕組み。)
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【EKIUMI SUPECIAL TALK】ホルグの加藤年紀さん
・第1話 出る杭が打たれる環境で成果を出す人とは。スーパー公務員の共通点。
・第2話 自分はまったく世の中の役に立っていないんじゃないか
・第3話 全国1788の地方自治体にノウハウを届けたい。地方公務員オンラインサロンという仕組み。
▼インタビュー・編集 小野寺将人(Blog / Facebook / Twitter)
2015年、茅ヶ崎市に移住。「エキウミ」の管理人。住宅・不動産サイト運営会社、お出かけ情報サイト運営会社にて営業・企画職を経た後、現在は総合ポータルサイトにて企画職に従事。東海岸商店会の公式サイトの運営や、ハンドメイドアクセサリーブランドm'no【エムノ】のウェブマーケティングも行う。
▼編集アシスタント 堀達也(Facebook)
1987年生まれ。平塚在住。2018年よりエキつくに参加 。大学卒業後、社会保険労務士事務所を経て藤沢の企業で総務経理として裏から支える仕事に従事。休日はホームページ制作のボランティアをしたり、パン屋巡りをしたり。カレーパン大好き。美味しいカレーパンを与えるとすぐになつく…かも。
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