素材の持ち味を生かした伝統的な製法で。毎日食べ続けられる、地域にずっと根付き続けるパンを。「B-grotto」
早朝の雄三通り、ふんわり小麦が香るスポットがあるのをご存知だろうか。嗅覚を研ぎ澄ませ、周囲をよく見渡すとパンのイラストの黒板、そして小麦の香りが地下への階段へといざなう。そこには洞窟を改装したかのような明るいブーランジェリー「B-grotto」が現れる。まるで絵本の物語のように香りに誘われ、そこで新しい出会いを体験するだろう。
「B-grotto」という店名は、Bはブーランジェリー、grottoは洞窟。洞窟とは思えぬその明るい店内にはカフェベーカリーのように食事のできるイートインスペースや、ミニギャラリーが。 そしてシェフがこだわりでもある、作り手の顔が見えるパン屋。シェフが厨房でパンを焼いてる姿をのぞくことができ、どこか安心感がある。
外はカリッと、風味を閉じ込めた“ハード食パン” と 丁寧に熟成させた”角食パン” はシェフの真骨頂
B-grotteの名物といえば、「ハード食パン」。銘店で修行を重ねてきたシェフのルーツの作品であり、B-grottoの看板ともいえるパンだ。小麦粉とイースト、塩、水だけという、フランスパンと同じ材料の生地を型に入れて焼いた、言わばフランスパン生地の食パン。軽くトーストすると香ばしさが増し、主食として食べるならそのままちぎってスープと食べると甘みが増す。いろいろな楽しみ方ができて、かみ締めるほどに小麦の旨みが伝わる逸品。同じく「角食」も、熟成に丁寧にひと手間かけ、シェフの誠実な仕事ぶりが覗える。袋を開けたときのふわっとした熟成された香りがクセになる。
食パンは季節や曜日に応じて、アレンジしたバージョンが登場する。甘さを抑えたオレンジピールとジンジャーパウダーの爽やかな味わいの「ジンジャーオレンジの食パン」、レーズンになんと黒糖をまぶして酸味と甘みのコントラストが楽しい「レーズン食パン」、チーズとスパイスで手が止まらなくなる「黒こしょうとチーズの食パン」など。食パンのラックは要チェックだ。
焼きあがりは、「ハード食パン」が13:00、「角食」が9:00。もちろん予約も可能。その他の食パンについては問い合わせを。
大きなアイランドテーブルで、まるでパンの宝探しのように新しいパンと出会う
店内に入るとドーン!と大きなアイランドテーブルにバラエティに富んだパンがずらり。お店に行く時間や季節によって 出会えるパンの種類は、なんと約80種類。店内奥の工房で常にシェフが動き回り、新しいパンが次々と焼かれ、 テーブルに並べられてゆく様子を眺めるのもB-grotteの楽しみのひとつだ。
パンのひとつひとつのPOPに丁寧に説明が書かれており、卵・牛乳などアレルゲン食材も明記されているため、お子さん がいる家庭でも安心して購入できる。また、このアイランドテーブルは子供たちにも人気。その理由は子供の目線上にパ ンがあり「あれ食べたい!」と子供たちの声が飛び交う。それはまるでパンを通じたコミュニティ広場のようだ。
人気NO.1 の「レーズンとクリームチーズ」 焼きあがってはすぐに売れていく人気のパン。上品な甘酸っぱさのクリームチーズにレーズンの風味がアクセントに。いろんな種類のパンを食べた後でもペロリと食べれてしまう。
人気NO.2のカレーパン。毎日丁寧に油を変え、揚げたてを提供している。人気の理由のひとつは、カリっとした食感と薄いけどもっちりした生地。食べてみてのお楽しみ。ふたつめは、たっぷり入ったカレー。辛さも控えめで甘めに仕上げてあるためお子さんはじめ老若男女に愛される味だ。
シェフが一度は食べて欲しいという「アップルパイ」。修行時代のお店の味に日々近づけているという。とろとろに煮込んだリンゴの自然な甘みと酸味が、パイ生地のバターの風味との相性がよく、思わず頷いてしまう。
銘店で研鑽された技術と、常に勉強し続ける姿勢から生まれるパンの数々
B-grotteの全てのパン作りを手がけるのは、オーナーシェフの石井幸男さん。学生時代からパン作りに携わりその探究心から、葉山の「ボンジュール」や、神戸の「コム・シノワ」などの銘店でパン職人としての経験を積む。両店で研鑽したその技術が生かされた「B-grotte」のパンは伝統的な製法でありながら親しみやすく、食べ手に寄り添うパン作りを心がけている。
そんな想いでパン作りに情熱を注いでいる石井シェフは、独立してからも常にパン作りにおいての勉強や技術の研鑽をかかさない。店内の本棚には来店されたお子様向けの本に混じって、レシピやパンの本がずらりと並ぶ。仕込み、ミキシング、発酵、成形、焼きなどパンの工程は数多くあるが、シェフによって重要と捉える工程が違うという。このそれぞれの工程をすべてこなしている石井シェフはお店を開業した今でも、他店のシェフの話や他店のパンを食べては研究を重ね、自分のパンをさらに確立させようと努力しているという。この真摯にパンに向き合う職人姿勢もまた、何種類もの新しいパンを産み続けている原動力なのかも知れない。
たくさん作ってもお客様にとっては「ひとつのパン」。パンひとつひとつと向き合う。
パン作りで大事にしていることは?と石井シェフに聞くと、「ひとつひとつを大事に、丁寧に作ることです。」と、笑顔だった顔を急に引き締めて答えた。 「毎日パンをとにかく沢山作りますが、お客様にとっては、買ったたったひとつのパン。そう思うと、そのお客様が食べる顔が思い浮かんで、ひとつひとつを大切に扱い、美味しくなれと念じながら作っていますね」と、石井シェフ。
厨房と店内の仕切りをガラスドアにしているのも、お客様がパンを選ぶ楽しそうな顔が見たかったことと、作っている工程をオープンにして、お客様との距離を縮めたかったとのこと。パン屋というツールを通じて、石井シェフのお客様への愛を随所に感じる。
B-grottoは茅ヶ崎を代表するパン屋として、パンフェスやマルシェ、生産者直売所などイベントにも積極的に出店している。いずれは、親子で楽しめるパン作り教室を開催することも考えているという。それだけ、地域の方々にパンに親しみをもってもらいたいという想いが詰まった「B-grotto」。
ルーツに忠実に、シーズナリティ溢れるパンたち。そしてお客様の顔を思い浮かべながらパンを作るという優しさと愛が満ち溢れるブーランジェリー。その温かさを求めにこの「洞窟」にきっと何度も足を運びたくなるだろう。
(次回につづく→【STORY】 湘南を愛し、パン職人を目指した、人生のチャレンジ)
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【YUZO-SELECTION:B-grotto】
・第1話 素材の持ち味を生かした伝統的な製法で。毎日食べ続けられる、地域にずっと根付き続けるパンを。「B-grotto」
・第2話 【STORY】 湘南を愛し、パン職人を目指した、人生のチャレンジ
▼インタビュー・編集 宇野知行
茅ヶ崎生まれ、茅ヶ崎育ち。食関連のサイト運営会社にて飲食店の繁盛の秘訣を探り続け、飲食店向けの情報誌の編集、マーケティング、販促支援などに従事。料理だけでない飲食店の魅力や楽しみ方を伝えるのがポリシー。週末ライター時々、釣りバカ。
▼インタビュー 小野寺将人(Blog / Facebook / Twitter)
2015年、茅ヶ崎市に移住。「エキウミ」の管理人。住宅・不動産サイト運営会社、お出かけ情報サイト運営会社にて営業・企画職を経た後、現在は総合ポータルサイトにて企画職に従事。ハンドメイドアクセサリーブランドm'no【エムノ】のウェブマーケティングも行う。
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