【茅ヶ崎館の森浩章さん】家業の理由なき慣習に従うことはできない。外資の企業に修行へ。


(前回の記事はこちら→茅ヶ崎と映画、茅ヶ崎館と小津安二郎監督


――― 森さんが働き始める前の学生時代には、どのような勉強をされていたのでしょうか。


 学生最後で言うと、工業デザインの専門学校です。

もともと美術や造型、特にタイヤのついているものが好きだったので、そういう道を探していたときに、海外にいる親戚からインダストリアルデザインという専門職のことを教えてもらったのがきっかけで入学を決めました。


――― 親御さんからは家業を継いで欲しいという話はなかったのでしょうか。


 父からは「自分がやりたいことで、手に職がつけられるものをやった方が良い」という話をされていて、家業を継ぐかどうかのところでうるさくは言われませんでした。


――― そうなのですね。工業デザインの学校では何を学ぶのですか。


 基本的なデッサンから、コンセプトの立て方まで、デザインの考え方を学びました。

そこで何事にもしっかりとした理由付けがすごく大事ということを学ぶことができたのが、いまでも活きています。

やはりコンセプトが定まっていない状態では良いものは生まれないし、良い仕事もできないではないかと思います。

もともと私自身が意味合いを求めるタイプだったので、性に合っている部分もあったのかも知れません。


――― なるほど。


 専門学校は当時三年制だったのですが、両親が高齢ということもあり早めに継がなければならないと思うようになり、二年間で辞めました。

ただこれに関してはやはり学ぶことが多かったですし、この歳になって自分に足りないものも改めて見えてきましたので、また勉強したいという気持ちが大きくなってきています。


――― 大人になって学習意欲がわくのはわかります。


 そして今後の事を色々と考えているときに、1995年1月17日の阪神淡路大震災が起きました。

日頃、両親から戦争を経験していない世代は、考えが甘いみたいに言われていたので、きっかけは不謹慎ですが。自分の経験のために神戸の東灘区にボランティアに行きました。


――― はい。


 その後で茅ヶ崎館で働くようになったのですが、ほぼ毎日父とは喧嘩をしていました。



――― 喧嘩の種はどのようなことでしたか。


 ひと言で言えばジェネレーションギャップがやはりあって、父とは44歳離れているので意見が合わないんですね。

それに加えて私が腹落ちしないとやれないタイプなものですから、「これまでこうやってきたから、お前もこうしろ」というのが全然納得いきませんでした。


――― 毎日となると、相当なエネルギーを使いますよね。 


 はい。このままだといけないと思ったので、一度外でサービス業を学ぶために、当時あったシネコンのワーナー・マイカル・シネマズに「2年間限定で働かせて欲しい」と言って採用していただきました。


――― 最初から2年間限定と伝えたのですね。


 はい。応募期間は終了していたのに無理やり面接をしてもらって採用が決まったので、熱意で押し切ったという感じですね。

外資系だったので数字を追うということにすごく厳しかったので、それが良い経験になりました。 


――― それは今後に活きる経験ですね。 


 ざっくり言うと映画館はポップコーンやジュースで成り立っているビジネスなのですが、その物販領域の責任者をしていたので、自分が館の売上を支えているという意識で仕事をしていました。


――― なるほど。


 あとは今でもすごく活きている経験があったのですが、あるとき当時のワーナー・マイカル・シネマズの日本のトップに上司と呼ばれて会いに行ったのですね。

ご高齢の方だったのですが、数字の報告をするつもりで行ったのに、いきなり寄席の話をし始めて。

「噺家にも調子の良いとき悪いときがあって、悪い時はノリの良い笑ってくれる人を見つけて、その人に向けて集中的に話をする。そこから笑いが広がっていくのだ。」と。

で、それだけ言って、もう帰されたんですよ(笑)


――― それはキョトンですね(笑)


 帰りの電車で、上司と「あれは何を伝えたかったんだろう?」という話になりまして、「あれはつまり点から攻めろっていうことなのかな、つまり茅ヶ崎独自のことを磨けということかな」と色々と議論しました。


――― 自分の頭で気づかせたかったということなのでしょうか。


 恐らくそうだと思います。しかもその教えは20年経った今でも心に刻まれているわけで、茅ヶ崎館のコンセプトにもすごく活かせているわけですから、すごいなと思いますね。

しかしまあ長髪茶髪の21歳の若造を目の前にして、よくそんなやり方を取ったなと思いますよ(笑) 


(次回につづく→Suchmosと会って感じたこと。自分の感性を信じてあげるということ。) 


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【Think Chigasaki:茅ヶ崎館の森浩章さん】

・第1話 茅ヶ崎と映画、茅ヶ崎館と小津安二郎監督

・第2話 家業の理由なき慣習に従うことはできない。外資の企業に修行へ。

・第3話 Suchmosと会って感じたこと。自分の感性を信じてあげるということ。

・第4話 茅ヶ崎館は、「茅ヶ崎」と「小津安二郎監督」という二つの看板を背負っている。 




▼茅ヶ崎館

住所:茅ヶ崎市中海岸3-8-5/TEL:0467-82-2003/FAX:0467-82-3133/公式ページ



▼インタビュー・編集 小野寺将人(Facebook / Twitter

1986年生まれ。2015年、茅ヶ崎市に移住。「エキウミ」の管理人。住宅・不動産サイト運営会社、お出かけ情報サイト運営会社にて営業・企画職を経た後、現在は総合ポータルサイトにて企画職に従事。 ハンドメイドアクセサリーブランドm'no【エムノ】のウェブマーケティングも行う。






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