【茅ヶ崎館の森浩章さん】茅ヶ崎と映画、茅ヶ崎館と小津安二郎監督
▼森浩章氏のプロフィール
創業明治32年、国指定有形文化財であり、小津安二郎監督ゆかりの宿でもある「茅ヶ崎館」で五代目館主を務めている。「茅ヶ崎映画祭」や「湘南庭園文化祭」、「茅ヶ崎の文化景観を育む会」など、文化を守り育むための活動を広く行っており、雄三通りの活性化運動においても多大な貢献をしている。
――― 本日はよろしくお願いします。
森 こちらこそ、よろしくお願いします。
――― 森さんは茅ヶ崎館の館主でありながら、同時にさまざまな文化活動をされています。例えばこの「エキウミ」というサイトに関わるところだと、雄三通りを盛り上げる活動にも積極的にご参加いただいています。
森 はい。実は雄三通りは茅ヶ崎館とも関係する話があります。
「加山雄三通り」は、もともとお父さんの「上原謙通り」だったのですが、その上原謙さんは茅ヶ崎館と深い関わりがある小津安二郎監督と交流がありました。
ですから、上原謙さんのお宅があった雄三通り辺りには小津監督もよく遊びに行かれていましたし、逆に上原謙さんと奥さまの小桜葉子さんは茅ヶ崎館によく遊びにいらしていたのです。
――― そうだったのですね。たしか茅ヶ崎館は「東京物語」などで世界的に知られている小津安二郎監督が脚本のご執筆に愛用された宿ですよね。
森 はい。その「東京物語」以外にも、「父ありき」「長屋紳士録」「風の中の牝鶏」「晩春」「宗方姉妹」「麦秋」「お茶漬けの味」「早春」など多くの脚本を茅ヶ崎館でご執筆されました。
↓昭和30年「早春」茅ヶ崎ロケ中の小津安二郎監督
――― 茅ヶ崎館は昔から「小津監督ゆかりの宿」として世間に知られていたのでしょうか。
森 知られるようになったのは、2003年の小津安二郎監督の生誕100周年のときからだと思います。
その年は世界中の映画祭で小津監督特集が組まれていたのですが、茅ヶ崎館でも見学イベントをしたり、文化会館などで映画上映をしたりして、4日間で計4,800人がいらっしゃいました。
――― それはすごい人数ですね。もともとそれだけの人数が集まると思われていましたか。
森 いえいえ、見学イベントには2日間で2,000人が集まったのですが、正直1日200人ぐらい来れば良いかなと思っていました(笑)
ですから、そのとき日本人の心の中に小津安二郎監督の存在がどれだけあるのかを、思い知らされました。
小津監督は、その作品の内容の素晴らしさだけではなく、「小津調」と称されるジャンルができるほど映画界に影響を与えてきた方なのですが、その力を信じてやってきて本当に良かったと思いました。
↓小津安二郎監督と茅ヶ崎館四代目館主
――― ちなみに2003年から世間に知られてきたということは、森さんが館主になられる前はそこまで小津監督との繋がりを打ち出していなかったのでしょうか。
森 そうですね。茅ヶ崎館は今でこそ日本だけでなく世界の映画ファンにも知られるようになってきましたが、それまではほとんど打ち出していませんでした。
私が任されるようになってからは、その力を信じて打ち出してはきたものの、生誕100周年のイベントをやるまでは周りにもそこまで理解されていなかった部分がありました。
イベントを通じて、たくさんの方が茅ヶ崎までいらっしゃったのを見て、改めて人を呼べる魅力だということが確信できたので、自分の中では大きな出来事でした。
――― 自信が確信に変わったのですね。
森 そもそも茅ヶ崎館には箱根や熱海のように温泉があるわけではないので、何か特別な魅力を考える必要がありました。
茅ヶ崎の藝能史を掘り下げていくと、茅ヶ崎と映画の深い関係性が明らかになってきたので、茅ヶ崎館としてもその魅力を伝えていくべきだと考えました。
――― なるほど。流行を追うよりも、ルーツを掘り下げたのですね。
森 そうですね。明治創業のこの建物の雰囲気はやはり好きでしたので、これを活かしたいと考えていましたし、やはり「茅ヶ崎」という名前を入れている以上、ある意味「茅ヶ崎」の看板を背負っているわけですから、この地域の文化と共存していく必要があると感じています。
↓第7回 茅ヶ崎映画祭は2018/6/9~24に開催される(公式サイト)
【Think Chigasaki:茅ヶ崎館の森浩章さん】
・第1話 茅ヶ崎と映画、茅ヶ崎館と小津安二郎監督
・第2話 家業の理由なき慣習に従うことはできない。外資の企業に修行へ。
・第3話 Suchmosと会って感じたこと。自分の感性を信じてあげるということ。
・第4話 茅ヶ崎館は、「茅ヶ崎」と「小津安二郎監督」という二つの看板を背負っている。
▼インタビュー・編集 小野寺将人(Blog / Facebook / Twitter)
1986年生まれ。2015年、茅ヶ崎市に移住。「エキウミ」の管理人。住宅・不動産サイト運営会社、お出かけ情報サイト運営会社にて営業・企画職を経た後、現在は総合ポータルサイトにて企画職に従事。 ハンドメイドアクセサリーブランドm'no【エムノ】のウェブマーケティングも行う。
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