【水彩画家のかとうくみさん】「あなたはいつでも自分の都合ね」


(前回の記事はこちら→茅ヶ崎・雄三通りのフォトスポット


――― かとうさんは美術大学を出ているわけではないんですよね。


かとう そうですね、大学の専攻は家政学だったり、やってきた部活は剣道部とかマーチングバンド部だったりで、美術とは関係のないことばかりやっていました。


――― なるほど。他にはどんなことをされていましたか。 


かとう 学生時代はバブルの時期で、よく旅行にも行っていました。 ある時、家族と参加したツアー旅行で出会った方と、すごく仲良くなったんです。

それでお別れのときに「くみちゃんが就活するときは声かけてね」とおっしゃっていただいて、名刺をいただいたんですけど、見たらジョンソン&ジョンソン(以下:J&J)の社員さんだったんです。


――― 外資の大企業ですね。


かとう 私は世間知らずだからよくわかりもせずに、「え、ありがとうございます!私パウダー使ってます!」みたいなこと言っていたんですよ(笑)

旅行後も連絡は取っていて、何なら仲良くなり過ぎて1年後に光栄にもその方の結婚式でスピーチまでお願いされてしまって。


↓かとうさんの大学生時代の写真① 


――― さすが、昔からコミュニケーション力が桁違いですね。


かとう その方の奥さまもとっても聡明で素敵な方で、J&Jの人事部の方だったんですけど、その方ともすごく仲良くさせていただいていて。

それで、結婚式の頃にまた「就活どうするの?」って改めて聞かれて、「えっ全然まだ考えてないです。」「そうだと思った!」みたいなやり取りがあって(笑)


――― 目に浮かびます(笑)


かとう 実は当時から絵を描くことは大好きだったんですけど、その時は大して考えもせずに、絵とはまったく関係ないJ&Jの面接に行きました。そのときの面接がすごく印象的で、いまでもよく覚えています。


――― はい。 


かとう 私の家族は祖父母・両親・姉・私の6人なんですけど、「君は一番下だから周りに甘えて生きてきただろう」とか「君は挫折を知らないね」みたいなことをたくさん言われてしまって。


――― いわゆる圧迫面接ですね。 


かとう そうそう、それです! その時に悔しくて、でも図星すぎて辛くてポロポロ泣いてしまったんですね。

面接を終えて、街頭TVの中でニュースキャスターが笑っていて、「なによ、ニコニコしちゃってさ…」みたいなことを思った記憶があります(笑)


――― こっちの気も知らないで(笑)


かとう そうそう(笑)

で、結果として内定いただいたんですよね。


――― え?


かとう J&Jから内定をいただいてしまったんです。

他の内定をもらっていた同期はみんな高学歴で、「なんで私が?」っていう状況でした。 しかも同期リーダーに私を指名していただいて、「え、私でいいんですか?」みたいな。


↓かとうさんの大学生時代の写真② 


――― すごいですね。


かとう たしかアンケートか何かで選んでいただいた気がするのですが、そういうこともあり、もう残りの大学生活は浮かれちゃって遊びまくりましたね。


――― それはそうなりますね。


かとう そしたら、あまりにも遊び過ぎちゃって出席日数が1日足りなくなっちゃったんですよ。

浮かれまくりの遊びまくりで、計算ミスをして1教科だけ1日足りなくて


――― まさか…


かとう 先生に「たった1日のことだし、春休み全部行くし、掃除とかするし、J&Jの内定なんて大学的にもメリットありますよね?」みたいなバカなこと言って何とか単位もらおうとしたのですが…。


――― なんでもしますと(笑)


かとう そう。でも、その先生はとってもしっかりしている方で、「あなたはいつでも自分の都合ね」ってビシッとおっしゃって。

結局、たった1教科のたった1日足りないということで、1年間留年が決まってしまいました。


↓かとうさんの大学生時代の写真③


――― …やらかしましたね。 


かとう もう完全にやらかしましたね。でも今となっては甘ちゃんだった私に杭打ちをしてくださったというのがわかるので、とても感謝しています。

それで、当然就職はできないのでJ&Jには正直にお伝えしなければならないですよね。

例の素敵な奥さまが人事なので、会いに行って話したら、外に連れて行かれて、ひと言「青天の霹靂よ」って言われてバンッて扉閉められて。


――― きっと、推薦してくれていたんでしょうね。


かとう はい、恐らく。もう顔に泥塗りまくりですよね。

本当に本当に申し訳ない気持ちでいっぱいで、その後に猛省の手紙を書きました。今では仲良くしていただいています。

J&Jに伝えた後、家族に留年を告白するのに3週間かかってしまって。

やっぱり親はJ&Jの内定を喜んでくれていたし、親戚とか近所にも絶対言っているだろうし。


――― キツいですね。


かとう もうキツ過ぎですよね。で、ある夕飯のときに、ようやく言ったんですよ。

私、家族の顔見れなくて、下向いてご飯に涙ボロボロ落として。

「本当にごめんなさい。もう一年間よろしくお願いします」ってようやく言って、家族の顔を見れないまま、わーって泣きながら部屋に戻ったんですよ。


――― 忘れられない出来事になりましたね。


かとう もう本当に。この話は後日談があって、今から5年前ぐらいに、姉とお茶していたときに、「あの夕飯の時の家族がどんな感じだったか話したことあったっけ?」って言われて。


――― 気になります。


かとう 聞いたら、なんと「みんな腹抱えて爆笑だったんだよ!」って。

みんなで「こいつバカだねー!」って笑っていたらしいんですよ(笑) 


――― 失望とかじゃないんですね。良い家族ですね。


かとう もちろんがっかりさせちゃったと思うんですけど、その時はそんな感じだったらしいです(笑)

「え、じいちゃんとばあちゃんは?」って聞いたら、姉が「じいちゃん途中で寝てなかったっけ?」って。

「まじかー!」って叫びましたよね(笑)



(次回につづく→本当にやりたいこと) 





▼インタビュー・編集 小野寺将人(Facebook / Twitter

1986年生まれ。2015年、茅ヶ崎市に移住。「エキウミ」の管理人。住宅・不動産サイト運営会社、お出かけ情報サイト運営会社にて営業・企画職を経た後、現在は総合ポータルサイトにて企画職に従事。  ハンドメイドアクセサリーブランドm'no【エムノ】のウェブマーケティングも行う。



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