【もったいないジャパンの山本高大さん】「本当に必要なものを届ける」 被災地や福祉施設の声に応えるNPO法人。
茅ヶ崎を代表するNPO法人の一つ「もったいないジャパン」。その代表を務める山本さんは、被災地や福祉施設にいる「いま、この瞬間に困っている人」に物資を届けています。不用品(もったいない)を必要とされる場所に寄付する活動について、詳しくお話を伺いました。(全2話)
■不用品を必要とされる場所に届けるNPO法人
――― まずは、山本さんが代表をされている「もったいないジャパン」について教えてください。
山本 はい。順を追ってお話すると、もったいないジャパンより先に「セカンドブックアーチ」というNPO法人をつくったんです。
――― 名前にブック(book)がつくということは、本を扱っているのでしょうか。
山本 はい、不要になった本を集めて、福祉施設や病院に寄付しています。
その活動をしていく中で、本以外にも食料品から衣類、日用品、おもちゃからスポーツ用品まで、いろんなものが集まるようになりました。
それらを役立てるために、もったいないジャパンができたんです。
――― つまり、寄付するものが本の場合はセカンドブックアーチ、それ以外はもったいないジャパンで扱うということですね。
山本 そうです。たとえば本の場合、先ほど言った場所以外だと被災地に届けたりしています。
いまはもう落ち着きましたが、熊本や東北の被災地にある仮設住宅に届けたりもしました。
――― 本を必要としているところに届けていらっしゃるのですね。基本的には日本国内が対象でしょうか。
山本 国外にも送っていて、ミャンマーの学校や孤児院に寄付することが多いです。
↓ミャンマーの孤児院へ絵本を寄付した時の様子(引用:セカンドブックアーチ公式サイト)
――― 一方、もったいないジャパンの方では、本以外を扱っているということでしたが、どんなところに寄付をされるのでしょうか。
山本 本当に色んなところがありますよ。
この前は、ある企業さんから新品のランドセルを200個くらい寄付していただきまして。
――― そんなに。
山本 そのうち120個を「茅ヶ崎ランドセルプロジェクト」さんへ、その他は茅ヶ崎に3つある児童養護施設に寄付する予定です。
扱いが難しい食料品なんかは「フードバンク平塚」と茅ヶ崎市役所に寄付しています。
――― 茅ヶ崎市からも依頼があるのですね。
山本 たとえば生活支援課では、生活保護受給者の方の支援を目的とした依頼があったりします。
生活保護って申請してから受け取るまでに3週間くらいかかるのですが、それまでに必要な食料を提供することもあります。
↓子育て支援課に寄付したおもちゃ(引用:もったいないジャパンFacebook)
■本当に必要なものを届けることの重要性
――― 先ほど被災地にも寄付をされている話がありましたが、最近だと昨年の西日本豪雨とかですか。
山本 それもありますし、もっと最近だと今年の夏にあった九州北部の大雨のときもですね。
――― 避難所に必要なものは事々刻々と変わっていくと聞いたことがあります。
山本 本当にそうなんですよ。いまでもよく覚えているのが、熊本地震のときに「蚊帳(かや)が欲しい」っていうご依頼があって。
――― 蚊を避けるための蚊帳ですか。
山本 はい。熊本地震が起きたのは4月だったんですけど、被災地ではテント生活の方も多くて蚊がすごかったみたいで。
――― たしかに被災時期と避難所の環境で必要なものは違ってきますね。
山本 あとはテント暮らしで日付感覚がわからなくなるから「カレンダーが欲しい」というので2,000本集めたり。
あと、そうだよなと思ったのが「木のお椀とかの食器が欲しい」っていう声で。
避難所にあるのは紙やプラスチックの食器ばっかりで、食欲がなくなっていくらしいんです。
――― それは被災してみないと想像しにくいですね。
山本 そうなんです。だから困っている人から要望があったものを送るというのが鉄則で。
むしろ勝手な想像をしないっていうのが重要なんですよね。
――― 勝手に想像してはだめなんですね。
山本 困っているだろうからぬいぐるみ送ってあげようとか、子どもたちのランドセルがないと可哀想だからランドセル送ってあげようとかっていうのは、一方的にやってはいけないんです。
変な話なんですけど、そうやって送られて扱いに困ったものが、被災地からもったいないジャパンに送られてくることもあるんですよ。
――― それはすごい話ですね。捨てるのも心苦しいから、なんとかして欲しいと。
山本 そう、結果として被災者に余計な負担をかけてしまっているんです。
実際にあったのが、被災地からうちに絵本がたくさん届いたんですね。
お年寄りしかいない地域に、絵本がランダムで送られてきちゃったみたいで。
――― どうしてそんなことになっちゃうのでしょうか。
山本 単純な話で、被災者に聞いてないからいけないんです。
ひとこと「送っていいですか」って聞いてから送ればいいんですよ。
なにも聞かずに突然、「皆さんの善意を集めて送らせていただきました。どうかお納めください。応援してます。」っていう紙と一緒に送っても、それは「いやいや、ちょっと待ってよ」ってなっちゃうじゃないですか。
――― それだと応援にはなっていないですね。
山本 そうなんです。ですから被災地への寄付に関しては、直接送るのはあまりおすすめしないですね。
まず寄付団体に送って、そこから行政や現地へ届けるルートが確実です。
↓西日本豪雨の被災地に送った支援物資の一部(引用:もったいないジャパンFacebook)
■新品の衣類は生きる希望
――― 他に気をつけることはありますか。
山本 あとは衣類の寄付の問題もありますね。
「うちに着てない服あったわ。洗ってないけど緊急事態だし、いらなければ雑巾にもなるから」って送っちゃうと、大変な負担になるんです。捨てるのが。
――― 捨てるのが。
山本 やっぱり衣類で一番気をつけて欲しいのは、新品かどうかということです。
受け取る側が「中古でも欲しい」って言うのなら別ですけど、そうでなければ基本的には新品の良いものを送ること。
なぜかと言うと、それが生きる希望につながるんですよ。
――― 新品で良いものだと生きる希望になる。
山本 そう、「前を向いていこう」って思える。
自分が家も流されて家族も亡くなってどん底にいるときに、中古の汚い衣類が送られてくると精神的にガクッときちゃうんですよ。
ただでさえキツい状態の人たちに追い打ちをかけてしまう。
――― 逆に新品で良いものだったら、生きる希望になりそうですね。
山本 はい。自分の大切な人に送るようなものを、送った方が良いと思いますね。
――― 非常に勉強になるお話でした。後編では、セカンドブックアーチともったいないジャパンがどのようにして生まれたのかを中心に伺います。
(次回につづく → NPO法人は社会的意義の明確なビジネス。)
【Think Chigasaki】もったいないJAPANの山本高大さん
・第1話 「本当に必要なものを届ける」 被災地や福祉施設の声に応えるNPO法人。
・第2話 NPO法人は社会的意義の明確なビジネス。
▼インタビュー・編集 小野寺将人(Blog / Facebook / Twitter)
2015年に茅ヶ崎市に移住し、2017年に「エキウミ」を立ち上げる。東海岸商店会の公式サイトの運営や、アクセサリーブランドm'no【エムノ】のウェブマーケティング、記事の寄稿も行う(SUUMOタウン「まだ茅ヶ崎に行ったことのないあなたへ」、Gyoppy!「スーパーにはない魚が買える」茅ヶ崎の人気鮮魚店が果たしている大事な役割)。
▼編集 かんばやし ちえこ(Instagram/Facebook)
1988年東京都足立区生まれ。2015年に茅ヶ崎のシェアハウスへ移住後、そこで出会った夫と2018年に結婚し、現在は茅ヶ崎の海側でゆったりと二人暮らし。
大学卒業後に保育園運営会社で食育や野菜栽培研修の講師などに従事。その後、親子カフェベンチャーやNPOで学童保育運営、民間貸し農園ベンチャーで農園アドバイザーなど、20代は子ども×食農関係の分野で経験を積む。
▼編集アシスタント 蒼山静花(Twitter)
3歳の頃から茅ヶ崎に住み、大学卒業まで20年在住。ビジネス系WEBメディアの編集・ライターとして従事しながら、好きな音楽や旅行に関する文章の執筆も行う。現在は都内在住ながらも、地元に貢献したく「エキウミ」に参加。
▼編集アシスタント 井上普文(Facebook)
三重県出身。2014年に茅ヶ崎市に移住。コミュニティバスに貼られていたポスターを見てエキウミの読者に。茅ヶ崎で暮らす者として、茅ヶ崎のヒト・コトをもっと知りたいと思い「エキウミ」に参加。
▼編集アシスタント 横山 寛
湘南在住12年。19歳の時に始めた藤沢の無印良品でアルバイトをきっかけに湘南を離れられず今にいたる。インテリア、住空間作りの仕事で15年働きながら自分の町にどう関われるか役割を模索している中エキウミと出会い参加。おじさんが夢を語る場「へんなおじさん会」を定期開催中。
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