【鶴嶺高校の佐藤敎道 校長】これから社会人になる生徒たちに伝えたいメッセージ
(前回の記事はこちら → グローバル教育や地域との連携に力を注ぐマンモス校)
■校長先生のメッセージ
――― 前編では鶴嶺高校の魅力を伺いましたが、後編では佐藤校長のお話も伺っていきます。
佐藤 はい。
――― ズバリ、校長の役割ってなんでしょうか。
佐藤 校長の役割ですか…これは難しいですね(笑)
もちろん代表者ですから、学校経営について責任を持つことですよね。
あと生徒に対しては鶴嶺の校長としてメッセージを届けることもそうですね。
――― 最近だとどんなメッセージを届けましたか。
佐藤 先日、県から「津久井やまゆり園」の事件について生徒たちに話をしてくださいという指示が来たんですね。
いまの高校生の中には、あの事件についてよく知らない子もいるんです。
――― それは、伝え方が難しいですね。
佐藤 夏休み前の終業式で、1,000人以上の生徒にどう話そうかと…。
スライドを用意して、何人が、どういう風に殺害されてしまったのか、社会にどんなショックを与えたのか。
その話をした後に、「多様性への寛容性」について話をしました。
――― 鶴嶺高校が力をいれているグローバル教育にもつながる話ですね。
佐藤 世の中にはいろんな人がいて、国籍や文化、障がい、そういう自分と違う部分がある人を「許せない」と言ったら成り立たないのが社会だと。
この多様性に対して寛容性を持つことが、みなさんにとってとても大事なことなんですと。
■これから社会に出る生徒たちへ
――― 大切なメッセージですね。高校生ですから、もう社会に出たときの話もしないといけない。
佐藤 そうなんです。鶴嶺の生徒は素直で良い生徒が多いので、学校の中は平和な環境なんですね。
それはもちろん良いことなんですが、社会に送り出すうえで強さも大事だと思うんです。
そういう意味で、フランスの作家「スタンダール」の話をしたこともあります。
――― スタンダールを引き合いにして、強さについて話をされた。
佐藤 彼のお墓には三行書いてあるらしいんです。「生きた、愛した、死んだ」と。
これはこれで素晴らしいけども、私が一行足すとしたら「戦った」です、という風に話をしました。
――― なるほど…校長、戦って来られた人生なんですね。
佐藤 そこまで言うほどではありませんが(笑)、ただやっぱり素直だけでは生きていけない面があるじゃないですか。
その強さにも種類があって、しなやかな強さをもって欲しいんです。
――― 近年よく言われるようになった「レジリエンス」ですね。
佐藤 まさにそうです。葦のようなしなやかな強さ、英語で言えばhard(ハード)よりもtough(タフ)、soft(ソフト)よりもresilient(レジリエント)な資質を身につけて欲しい。
これから社会に出る生徒たちに、そんなメッセージを伝えるようにしています。
■気がついたら校長になっていた
――― ところで佐藤校長は、どうして教員になられたのですか。
佐藤 私は英語教員だったんですけども、そもそも外国語に興味があって何ヶ国語か勉強していたんですね。
言語が文化を支えている部分も知っていく中で、それを教える人になりたいと思うようになったのがきっかけです。
――― 言語の勉強が面白かったんですね。
佐藤 これは私だけかも知れませんが、英語教員って最初の数年は不安を抱えながら授業をしていたりするんですよ。
言語って広がりがたくさんあって、教養が必要になる部分もありますしね。
――― たしかに言語の勉強は終わりがないですよね。そこからどのように校長になられたのでしょうか。
佐藤 40歳の頃に大学院に行って勉強しなおしたり、教育委員会に行ったりしながら、教頭になり副校長になり、気がついたら校長になっていた、という感じです(笑)
――― ちなみに校長になると、学校をガラッと変えられるものでしょうか。
佐藤 学校って何十年と歴史を積み重ねるなかで、DNAのようなものがあるんですよね。
それを脈々と受け継ぎながら、良い形にしていくのが校長の役割なのかなと思います。
■授業のネタ探し
――― 佐藤校長が今後の人生でやりたいことはありますか。
佐藤 まだ未定ですが、また教壇に立つ自分を考えることはあります。
気がついたら、街角で授業のネタ探しをしていたりもします(笑)
――― どんなネタですか。
佐藤 たとえばとあるハンドクリームの広告があって、キャッチコピーに「おにぎりも握れるハンドクリーム」と書いてあったんですよ。
要はべたつかないよ、ということなんですけども。
それを英語で、3通りの言い方ができるように頭の中で訓練をするんですよ。
――― 面白そうな授業ですね。
佐藤 やはり教壇を離れてからは生徒と触れ合う機会がぐっと少なくなりますからね。
校長としての仕事も長くないと思いますから、また教壇に立つとか、学びなおすとか、まったく違う仕事を覗いてみるのも良いかなと思っています。
――― 多様性の話から個人的なお話まで、大変勉強になる内容でした。インタビューは以上です。ありがとうございました。
(おしまい)
▼神奈川県立鶴嶺高等学校
住所:神奈川県茅ヶ崎市円蔵1-16-1/TEL:0467-52-6601/FAX:0467-54-2124
▼インタビュー・編集 小野寺将人(Blog / Facebook / Twitter)
2015年に茅ヶ崎市に移住し、2017年に「エキウミ」を立ち上げる。東海岸商店会の公式サイトの運営や、m'no【エムノ】のWEBマーケ、記事の寄稿も行う(SUUMOタウン、Gyoppy!、ARUHIマガジンほか)。
▼カバーデザイン 鈴木亜美(Webサイト)
都内企業でインハウスデザイナーとして働いていたが震災をきっかけに「海のある街で犬と暮らしながらデザインの仕事をしていきたい」と思い立ち、2012年に湘南に移住。現在は湘南を拠点にフリーランスのデザイナーとして多くのWebサイトやプロモーションツールを制作している。「茅ヶ崎のことを知りたい&地域貢献したい」という思いから「エキウミ」に参加。
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