【川廷昌弘さん:写真家編②】写真家として死にたい。三重県の林業家「速水林業」との出会い。


(前回の記事はこちら→写真家編①:阪神淡路大震災で被災を経験。生まれ育った芦屋市の復興を撮る。


――― これまでのお話から、川廷さんは博報堂DYホールディングスで環境問題やCSRに携わってきたこと、そして写真家だということがわかりました。 


川廷 はい。そして「雄三通りの木の家」に住んでいる(笑)


↓雄三通りの木の家 


――― それぞれを個別に聞くと別々のことのようですが、繋がりが感じられます。わかりやすく点と点を繋ぐために、例えば「木」を軸にしたエピソードなどありますか。


川廷 そうですね。まず森林に着目したのは、博報堂で「チーム・マイナス6%」という国民運動を推進しているときでした。

この6%の削減目標の内訳を見てみると、実は民間で減らすのは0.6%しかなかった。


――― つまり「節水」とか、「節電」、といった啓蒙の部分ですね。


川廷 そうです。では内訳の中で一番大きなものは何かと調べたら、3.8%の森林吸収だったんですね。

その中で出会ったのが、我が家の柱にも使っている尾鷹ヒノキを育てられた「速水林業」の代表・速水亨さんだったんです。


――― 森林吸収というのは、要するに二酸化炭素を森林が吸ってくれるということですよね。 


川廷 はい。速水さんにその話を伺ったら、「川廷さん、確かに森林は二酸化炭素の吸収源だけども、その前に考えることがあるんですよ」と。

「まずは山が健全でないといけない。そのためには生態系が重要なんです」ということを言われたんですね。


――― なるほど。 


川廷 これだ!と思って、弟子入りするような気持ちで、その後もいろいろ教えをいただいたんです。

あるとき、速水さんから「川廷さんは写真やるんですよね。一度カメラを持って遊びに来たらどうですか」って言われて。

私は写真家ですから、「撮るなら遊びじゃなく本気でやらせてもらいます!」と言って、速水林業の山小屋に10日間ほど山ごもりさせてもらったんです。 



――― 10日間も。


川廷 ある日の夕方に速水さんが山小屋に来てくれて、ぽつぽつと語ってくれたんですね。

「林業家というのは、木や森ではなく山を見ているんです」と。

「八百万の神という言葉がありますが、山にいるとそれが感じられるんです。葉っぱにも木にも石にも神が宿っている。だから、よく生物多様性という話をする方がおられますが、それを言うならば山では万物多様性が育まれるのですよ」と。


――― 山で見ると生物に限定する話じゃないんですね。


川廷 林業家というのは本当にすごいなと思いました。

・・・一方、そのとき私が同時に何を考えていたかというと、なるほど、そうか、という学びと共に、そのときの速水さんの顔がめちゃくちゃ良くて、「これ、写真撮らなきゃ」という気持ちがどうにも抑えられなかったんですね(笑)


――― なるほど(笑)


川廷 もちろん学びに来たんだけれど、やはり写真家として行っていますからね(笑)

真剣な速水さんの話に相槌を打ちながら、まずカメラを探すじゃないですか。そしたら運悪くちょっと遠くにあるんですよ。


――― はい。


川廷 仕方ないので「はい・・・ええ・・・なるほど」と言いながら軽く腰を上げて、もちろん速水さんから目を離さずに、忍び足で歩いてカメラに手を伸ばしてなんとか取って。

よし、これで撮れると思って、「ははあ・・・そういうことですね、なるほど」とか言いながらそっとカメラを構えたら、テーブルの上に書類とか色々があるわけです(笑) 


――― ああ・・・(笑) 


川廷 また同じ要領で「はい・・・ほう・・・」なんて言いながらテーブルをきれいにして(笑)

そういった経緯でなんとか撮った写真がこちらです。 



――― 素敵なお写真です。 


川廷 この写真はご本人にも気に入っていただけました(笑)

ちょっと冗談っぽく話してしまいましたが、速水さんのような林業家から直接お話をいただくのは本当に貴重なことで、今も多くの学びをいただいています。


――― はい。


川廷 ある日の早朝、5時ぐらいにカメラを持って山を歩いていたんですね。
風や葉の音を感じてふと顔を上げると、何か見下ろされている感じがしたんです。

私は三脚を立てて、「撮らせていただきます」と呟いてお辞儀をしてから撮ったのが、こちらの写真です。 



――― こちらが"何か"を感じた写真ですね。


川廷 自分はもちろん霊感もないし、山に入るようになって間もない人間ですから、「お前が何をわかってるんだ」って言われても何も言い返せないんですけど、でもそのとき自分は「何かがいらっしゃっている」と思ったんですね。

それから3年通って作品作りをして、そのときに撮った写真も使いながら「人工林の美、林業の現場。」という写真展を行ったんですけど、会場で写真を見てくれた速水さんが、「あれ、川廷さんにも見えたんですね」って言ってくれたんです。


――― すごい!


川廷 これまで仕事を通じて気候変動、森林保全、生物多様性みたいなことを机上の知識として学んできて、それが写真家としての体験によって血肉化できました。

「写真を撮るって、こういうことだよな」と、強烈な実感を得られる体験ができました。

私は写真家としてはまだまだ無名ですし、写真展の審査だって厳しいことを言われることもあるけれど、速水さんとの経験は「写真家として死にたい」と思わせてくれた経験のひとつです。 





▼インタビュー・編集 小野寺将人(Facebook / Twitter

2015年、茅ヶ崎市に移住。「エキウミ」の管理人。住宅・不動産サイト運営会社、お出かけ情報サイト運営会社にて営業・企画職を経た後、現在は総合ポータルサイトにて企画職に従事。ハンドメイドアクセサリーブランドm'no【エムノ】のウェブマーケティングも行う。

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