【ゆうゆう保育園の逆井絵里香さん】普段の子どもの会話から言葉を拾って行動するのが保育園での大人の役割

(前回の記事はこちら → 幼児教育の中にその国の文化が詰まっている


■遊びたくなる大人であること


▼保育の様子


ーーー 幼稚園での勤務やオーストリアでの幼児教育のワーキングホリデーの経験があるなかで、0~2歳を対象としているゆうゆう保育園では、どんなことを軸にして保育をしているんでしょうか?


逆井 私自身、0~2歳児の保育は初めての経験だったんです。

幼稚園の3~5歳の子どもたちと保育園の0~2歳の子どもたちってやっぱり全然違くて。

3~5歳くらいだと、ある程度自分たちで遊べて、大人がいなくても成立しちゃうんですよね。

もちろん、0~2歳にもそれぞれに世界観があるにはあるけれど、何より大人の関わり方が本当に重要だと思っています。


ーーー どんな関わり方がいいんですか?


逆井 保育では、大人が子どものことを引き出すことがとっても重要で。

でもそれってわざとらしい関わり方じゃ絶対ダメで、いかに自然に引き出すかというのがすごく大事だと思っています。


ーーー なるほど。


逆井 大人の都合で子どもの動きを誘導しちゃうことってあるじゃないですか。

今こうして欲しいという気持ちが裏にあって「これやってみたら?」って子どもに声をかけてしまうみたいな。

そうすれば、ことがスムーズに動くっていうのをわかって大人が声をかけがちなんですよね。


ーーー 例えば、制作のときに「ここに貼ったらいいんじゃない?」みたいな?


逆井 そう、それはすごい思ってました(苦笑)

保育士としての仕事に就いたばかりで、0~2歳の子どもたちを持ったときは、自分も初めてで本当にどうしていいかわからなくて。


ーーー子どもに全部任せていたら、しっちゃかめっちゃかになっちゃうと(笑)


逆井 そう(笑)例えば、色画用紙を使って顔をつくるときに、3~5歳の子たちだったら大体パーツの場所がわかって貼ってくれるけど、0~2歳だとそうもいかないんですよ。

なので、「これは目だからここら辺に貼ろうね」とかやってしまったこともあって。作り終えてみたら、同じような顔ばかりができ上がって、どう考えても大人がやってるって感じる作品になってしまったんです。

それで、「これはいかんな」って思ったんですよね。まだ、0〜2歳児なんだから、完璧な顔に仕上がらなくたっていいじゃないって。


ーーー それが自然ってことですよね。


逆井 そうそう。そっちの方がおもしろいんですよ。それがあってから、この子は目がここに付いていると思ったんだ、それでいいじゃないって。

「自由に自分が目だと思うところに貼ってごらん」って伝えて、できあがった作品を一人ずつ見せてみようということをしたんですよね。

そしたら、全員が違う顔に仕上がって、そのほうが断然おもしろかったんです。子どもたちだ見せ合いながら、「この子のもあの子のもおもしろいね~」って。


ーーー のびのび好きなところに好きなようにってことですよね。


逆井 そうそう。おうちだと「これで遊ばせたら、あとで汚れちゃう・・・。片づけはどうせ私だし・・・」って。

お母さんも遊ばせたいのに、なかなか時間が許さなくて、ジレンマがあると思うし、子ども自身も遊びたいのにすごく制限されてしまってるんですよね。


ーーーそれは園長先生もおっしゃってましたね。


逆井 さっきも言ったけれども、0~2歳児は大人の関わり方が大切で。

子どもたちが「この大人と遊びたい」って感じる興味の対象になれるようにしているんです。まだ友達同士の関係性の中で遊ぶというのが難しい時期で、おもちゃの取り合いになっちゃう。

そんな中、「この大人と遊ぶとおもしろいな」「ぼくのことわかってくれる人だ」って、興味を持ってくれると結局は一緒に遊ぶことにつながって一緒に遊ぶと自然と大人と子どもで信頼関係と愛着関係も生まれて。

その二つがあると保育も展開しやすくなって。本当に全ていまくいくようになるんです。


ーーー なるほど。心も体も含めて、満たされる状態をつくるっていうのが0~2歳の保育のあり方という感じなんですかね。


逆井 そうそう。そう思います。というか、そう思えるようになったというのが良いのかな。

最初は本当にわからなかったけど、最近だんだんそういう答えが見つかってきました。子どもたちと向き合いながら。


■子どもの疑問を解決する保育


ーーー 認可保育園になって、改めて学年ごとのクラス体制で保育活動ができるようになった中で、子どもたちと接していてすごかったな、っていうような思い出はありますか?


逆井 一番思い出深いのは、認可になってからの初年度に2歳児の担任をもたせてもらったときのことですね。4月当初は本当に探り探りで、試行錯誤の日々でした。

ただ、前年度からの持ち上がりの子ども達だったので、その点ではお互い信頼関係は出来上がっていたところからスタートできたのはよかったですね。


ーーー なるほど。


逆井 ゆうゆう保育園ではおやつの時間に牛乳を飲んでるんですが、牛乳が苦手な子がいていつも飲むのが遅くなってしまう子がいて。

ある日、それを待ってる男の子が「牛乳ってどっからくるの?」っていう質問をしてきたんです。


ーーーおお、おもしろい質問!


逆井 そうそう。その時は、「牛さんだよ?」なんて簡単に答えちゃったんですよね。

のちのち、「サッて答えてよかったのかな」って私自身にすごい疑問に思って。


ーーー 子どもって些細なことでも知らないことばかりですもんね。


逆井 そこで、子どもの疑問を一緒に解決する保育っておもしろいいんじゃないかなって思ったんです。


ーーー ほうほう。


逆井 牛乳ができる過程を見に行けないかと思って、色々調べて、茅ヶ崎市内で子どもたちも行ける距離に乳牛の牛舎があることがわかって。

すぐ、園長先生にも相談したら賛同してくれて。先方にも経緯を話してアポイントが取れたんです。


ーーーわ、すごい。


逆井 ちょうど数字にも興味を持ってた時期だったので、牛さんに会いに行く日までのカウントダウンカレンダーをつくって、お当番さんが順番に毎日塗りつぶし、「あと何回寝たら会えるね。」なんて会話も生まれて。

みんなワクワクしながら日々を過ごしてましたね。


ーーー牛乳への疑問から、色々な方向に広げていったんですね。


▼いろいろな牛の絵本の読み聞かせ


逆井 そうそう、当日ただ行くだけっていうのはもったいないなと思って。もう考えられるすべてのいろんなことを取り入れましたね。

牛の絵本を図書館で借りてきて、読み聞かせのときに一日一回牛の絵本に触れてみたり。

でも、いざ当日を迎えて衝撃だったんです(笑)


ーーー どうしたんですか。


逆井 毎日触れてきたし、絶対牛の知識はついてんだろうと思って、「牛さんって、しっぽあるんだっけ?」ってとぼけた感じで聞いてみてたら、「ある~」って言う子がいたり、「ないよ!」って言う子がいて(笑)

えー、これまで何をみてきたのー!?って心の中で叫びましたよ(笑)


ーーー (笑)


逆井 「じゃあ、お腹ってさじゃあ何色なの?」「からだの色は?」「絵本ではどうだった?」って聞いても、「え、白?黒?」「白と黒だよ?」みたいなみんな意見が色々飛び交って。

絵本見ただけじゃやっぱり全然入ってこないんだな、っていうことが改めてわかりました(笑)


ーーー それで実物を確認して知っていったんですね(笑)


逆井 そうですね(笑)牛舎に着いてから、「ねえ先生、しっぽがあったよ」って、園で言ってたことを大人が「ねぇどうだった?」って聞く前に子どもの口から言ってくれて。

「何を確認するかちゃんと覚えてるんだ」と思って。それをきっかけに他の子どもたちも「あ、そうだ確認しに来たんだ」って思い出したみたいで(笑)

次々に「あ、耳もあった」「え、お腹見てみよう。お腹どうやってみれるのかな」とか色々しゃがみこんでみたりとか、子どもたちがどんどん積極的になってってお腹はピンクだったとか、お腹におっぱいがあったとか。


ーーー いい発見がたくさんありますね!


逆井 そう。出発前に「確認しようね」って言ってた事以外も気づき始めて。案内してくれた牛舎の方に、自分たちから「ごはんは何食べてるの?」とか、「みんな立ってるけどどうやって寝るの?」とか。すごい大人では考えないような質問をしていて。


ーーー 本当に色々なことが気になったんでしょうね。


逆井 そうですね。大人が当たり前に分かっている知識も子どもは知らない。

「牛乳ってどこからくるの?」っていう、普通にしていたらスルーしてしまうような普段の会話の中で、言葉を拾い上げて行動に移すのが保育園での大人の役割なんじゃないかなって思いますね。

さらに、それを大人が教えるんじゃなくて、実際に自分の目で見て、体験するということが本当に大事なんだなと思いました。

子ども達もいい経験だったと思うし、私自身も子ども達のできることの多さを実感できる良い機会になりました。


■雄三通りの皆さんに“ありがとう”を伝えるプロジェクト


▼毎日、雄三通りを歩いてお散歩へ


ーーー 保育の中で、雄三通りの方々とふれあう機会はあるんですか?


逆井 ハロウィンで近隣のお店の方には毎年協力してもらっています。

他には、私が2歳児の担任をした時には、『ありがとうプロジェクト』という機会をつくりました。


ーーー 『ありがとうプロジェクト』?


逆井 子どもたちもいつしか散歩に行く目的が、雄三通りで働く方々に会いに行くみたいなところもあって。

卒園が近くなった頃、「もぅ、こうして挨拶もできなくなっちゃうね」と子どもたちも、どこか寂しそうになっていて…。


ーーー そうですよね。


逆井 だから、その人たちに何かできないかなっていう話から始まったのが『ありがとうプロジェクト』なんですよ。


ーーー なるほど。


逆井 子どもたちから、「じゃあ、バイバイしにいく」とか、色々提案してくれて。

その中で、「いつもおはようしてくれたから『ありがとう』しにいく」っていう風に言ってくれたんです。

「あ、いいね。ありがとうを言いに行くってできそうだよね。じゃあやってみよう」って。


ーーー 子どもたちから出てきた言葉だったんですね。


逆井 はい。卒園間近に子どもたちがメダルをつくって、雄三通りで仲良くなれた方々へ卒園してしまうという事情をお伝えして、子どもたちから「ありがとう!」と作ったメダルを渡しに行きました。そうしたら、とっても喜んでくれて。


ーーー 気持ちが伝わったんですね。


逆井 そうですねぇ。中には涙ぐんで受け取ってくれた人もいて。その姿を見た子どもたちが、いつもニコニコおはようって言ってくれた人たちが、「あれ?泣いてる」って気づいて。

「なんで泣いてるの?」って聞いてる子たちもいて。子どもなりに何か感じるものってあったんだろうなっていう貴重な機会になりました。


ーーー たった2歳の子どもたちが。


逆井 そうなんです。4月当初なんて各々自分がやりたいことばかりで、友達なんて関係ないっていう感じだったけど、3月の卒園直前には、「友達あっての僕、」みたいなそういう姿に変わってきていて。

1年間の成長をすごい感じましたね。子どもたちには、私がやっていきたい保育を教えてもらったような気がしていて本当に感謝しています。

子どもって生まれた瞬間から、きちんと一人の人間で、その瞬間から自分の意思があって。あれしたいこれしたいっていう気持ちがあるから、大人が思っている以上に本当に何でもできます。

子どもって無条件にかわいいから、大人もついつい手を貸してしまいたくなっちゃうけど、その子本来の力を発揮するためにも、まずは自分でやらせて、大人は温かく見守るってこともすごく大切ですよって、改めて皆さんにお伝えしたいですね(笑)


(おしまい)




【湘南・茅ヶ崎の雄三通りで会えるあの人】ゆうゆう保育園の逆井絵里香さん

・第1話 幼児教育の中にその国の文化が詰まっている

・第2話 普段の子どもの会話から言葉を拾って行動するのが保育園での大人の役割




▼ゆうゆう保育園

住所:茅ヶ崎市東海岸北2-1-42 サンシルクマンション1階/TEL:0467-38-6360



▼インタビュー・編集 かんばやし ちえこ(InstagramFacebook

1988年東京都足立区生まれ。2015年に茅ヶ崎のシェアハウスへ移住後、そこで出会った夫と2018年に結婚し、現在は茅ヶ崎の海側でゆったりと二人暮らし。

大学卒業後に保育園運営会社で食育や野菜栽培研修の講師などに従事。その後、親子カフェベンチャーやNPOで学童保育運営、民間貸し農園ベンチャーで農園アドバイザーなど、20代は子ども×食農関係の分野で経験を積む。


▼編集アシスタント 権藤勇太

エキウミインタビュー担当。平日は都内で法人向けの業務改善提案を行う営業マン。休日は緑に囲まれた茅ヶ崎で畑をいじったり、キャンプしたりフットサルをしたりのんびり生活をしている。消防団に入ったことをきっかけに、自分が使うお金がどこに流れて回っていくのか興味をもち商店街の活性化に2018年参加。


▼編集アシスタント 中島 美穂(Instagram

横浜市出身。夫婦で都内の会社近くに住んでいたが、2年前に勢いで茅ヶ崎へ移住。都内でWebサービスのマーケティング、CRMを担当。茅ヶ崎を知りたい・つながりたいと思い「エキウミ」に参加。趣味は犬の散歩と低山ハイキング。

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