【イラストレーターのハルペイさん】イラストレーターを名乗った日

(前回の記事はこちら→ゆるくて、ちょっと笑えて、癒される絵


■個展を開く日々


――― ハルペイさんはイラストレーターになる前は、美術を学ばれていたんですよね。


ハルペイ はい。私は大学で美術を四年間学んだあと、そのまま助手として大学に残ることができました。


――― ということは、ずっと制作を続けてきたのですね。


ハルペイ そうですね。卒業後も十数年大学にいたので、ありがたいことにずっと制作の現場にいることができました。

卒業のタイミングで一度離れてしまう方が多い中で、そういう意味では本当に恵まれていて。


――― どんなことを学ばれていたのでしょうか。


ハルペイ 私の場合は「版画」と「テンペラ画」です。


↓ハルペイさんの過去の版画作品


ハルペイ ちなみに「テンペラ画」というのは古典的な技法で、いまこの技法を学ぶ機会というのはすごく希少なんですね。

日本のテンペラ画において第一人者である田口安男先生という方がいらっしゃるのですが、ご縁あり助手につきながら数年かけて教えていただきました。


↓ハルペイさんがテンペラ画を描いているところ


――― 助手時代には作品の発表などされていたのでしょうか。


ハルペイ 20代の頃は銀座や青山、原宿などで個展を開かせていただいていました。

最初の銀座の展覧会のきっかけは、とある画廊にキャンセルが出たことだったんですね。

困った画廊のオーナーに相談された先生が、勝手に私の名前を伝えて了解しちゃったんですけど(笑)


――― それは焦りますね(笑)


ハルペイ もうバタバタだったんですけど、周りから背中を押されるうちに実現してしまって。

そしてそこで初めて自分の作品が売れたときは、「あ…行っちゃうんだ」っていう、我が子を嫁に出す感覚でした(笑)


■洋画家・酒匂譲(さこうゆずる)先生の存在


ハルペイ その田口先生の助手になってテンペラ画の技法を学ぶようにアドバイスをしてくださったのが、前回少しだけお話しした洋画家・酒匂譲先生です。

そもそも私は酒匂先生おかげで大学に残ることができたので、それだけでもすごく感謝していて。


――― 酒匂先生はどんな方でしたか。


ハルペイ もともとは大学で油絵を教えてくださった先生で、なんていうか…師匠であり、お父さんみたいな存在です(笑)

長年近くにいさせていただいて、言い尽くせないほどたくさんのことを教わりました。


↓酒匂譲先生


――― 美術の制作面でも、精神面でも支えになった方だったんですね。


ハルペイ そうですね。やっぱり美術の制作って悩む場面がよくあるじゃないですか。

「私は過去の自分の模倣をしているんじゃないか」とか、「評価されるところに置きにいっているんじゃないか」とか、「もっともっと新しいこと面白いこと出せるはずでしょ私!」とか…こういう変なルーティーンに入っちゃうことがよくあるんですよね。


――― それは苦しいでしょうね。


ハルペイ 美術にかかわるとそういう悩みをずっとずっと抱えながら生きていくから、やっぱり仲間の存在とか、先生の存在っていうのは大きくて。


↓助手時代


――― 逆に先生からしても、ハルペイさんに救われる場面は多かったかも知れません。


ハルペイ そういえば先生ってすぐ自分の作品を消しちゃんですよ。

「あーーー」とか言いながら(笑)

なのですごく良い作品なのに消しそうになったら「あー先生、絶対消さないで!」って言ってよく止めていました。

逆に先生からも「ハルちゃん、いま描いたその作品は破っちゃだめだよ!10年経ったらその良さがわかる日が来るからね!」って言われたりして(笑)


↓ハルペイさんが大学で制作をしていた頃


ハルペイ もう先生には本当にお世話になりっぱなしで…。

いまから3年前の話ですが、そんな先生も年のせいか具合が良くなくて入院していたんですね。

ご家族から連絡をいただきお見舞いに行って、少しお話をして帰って、次は週末に来ようと思っていたんです。


――― はい。


ハルペイ でもそのお見舞いの翌々日、朝起きた瞬間からなんだか胸がざわついて、「私、今日お見舞いに行かなきゃだめだ」って思って。

急いで金沢八景の病院まで車で向かったんです。


――― はい。


ハルペイ 病院についたら先生のご家族が集まっていて、「ハルちゃんどうして来てくれたの!」って。

「急に具合が悪くなって、ハルちゃん呼ばなきゃっていま話していたところだったんだよ。でももう間に合わないかもしれないし、どうしたらいいか話し合っていたのよ」って言うんです。


――― それは、すごい話ですね。


ハルペイ その日は先生のご家族と一緒に、先生と最期の時間を過ごしました。

さっき先生のことを「お父さんみたい」と言いましたが、最期に家族同然の先生と一緒に居られた時間は奇跡みたいでした。


↓ハルペイさんの自宅リビングに飾られている酒匂譲先生の作品


※ハルペイさんより以下のイベントのお知らせをいただきました。

名称:酒匂譲展 ~没後3年 画集出版記念~

日程:2019年2月11日(月)~2月16日(土)

時間:11:30~19:30(最終日17:00)

場所:うしお画廊

住所:東京都中央区銀座7-11-6 イソノビル3階


■イラストレーターを名乗った日


――― 前回、ハルペイさんがイラストレーターを名乗るようになったのは、イラスト公募展がきっかけだったというお話がありました。


ハルペイ そうですね。子どもができたことをきっかけに大学の助手から離れることになり、そこから試行錯誤の期間がありました。

子育てにすこしだけ余裕が生まれた頃、また本格的に絵を始めたいと思ったのですが版画やテンペラ画は環境や時間的に厳しいなと。

それで公募について調べていたら、イラストの公募が目に入ってきたんです。


――― あ、そこではじめてイラストの道が現れたのですね。


ハルペイ そうなんです。それまで想像もしてなかったんですけど、そういう道もあるのかもって。

それで妊娠中や子育て中に書き溜めていた絵の中から選んで応募をしてみたら、ありがたいことに賞をいただけたんです。


↓受賞した作品


――― すごい。


ハルペイ それで授賞式にお呼ばれしたんですが、これは私みたいな者が行って良いものかどうかずいぶん悩みました。

ただ審査員が有名なデザイナーの長友啓典さんや、出版社の方々などすごいメンバーだったので、こういう方々に私が会えるのって未来永劫ないかも知れないから、この機会を逃してはいけないんじゃないかと思うようになって。


――― はい。


ハルペイ もう授賞式当日は当たって砕けろみたいな感じで必死にまとめたイラスト作品のファイルをお見せしたら、「あなたの作品はだれが見ても幸せを感じられますね。

こういう絵が描けるイラストレーターにはいつの時代も仕事が来るから、頑張ってくださいね」と言ってくださって。


――― 背中を押されたのですね。


ハルペイ 私はいつもそうなんですけど、周りから背中を押されながら生きているというか、自分ひとりじゃ全然だめで。

審査員の方々の励ましのお言葉のおかげで、こんな自分でもできるかも知れないと思って。


――― 「アーティスト」と「イラストレーター」は別だという人もいますよね。


ハルペイ 本質的なところは同じだと思いますが、仕事の仕方としてアーティストは「自分の直感のまま描く」、イラストレーターは「相手の希望を叶えられるように描く」という違いはあるかも知れません。

まだまだ勉強中ですが、私がイラストレーターとしてご依頼をいただくときは相手の期待を超えられるように取り組んでいます。


↓ハルペイさんのアイコン


――― 自分が描いたイラストがイメージと違う形で使われるようなことはありませんか。


ハルペイ たとえばご依頼に対してAとBの2案を出すとしますよね。

AもBも自信を持ってお渡しできるレベルまで仕上げますが、そんななかで「たぶん今回はAかな?」と思っているとき、その逆のBが選ばれるときはあります。


――― はい。


ハルペイ でも実際にそのBが使われた完成物を見たとき、そちらを選んだデザイナーさんの力に感動するんです。

イラストレーターはデザイナーさんと組んで「自分のイラストを最大限に活かしてもらう」というのが見れるすごく楽しいお仕事です。

かわいいわが子が信じられないほど素敵なお嬢さんに変身した!みたいな感じです(笑)


――― ハルペイさんのバックボーンや、イラストレーターとしてのスタンスがよくわかるお話でした。次回は、今後の展望について伺いたいと思います。


(次回につづく→美術や創作の道に進む人の背中を押したい


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【湘南・茅ヶ崎で暮らす人】イラストレーターのハルペイさん(HPInstagram

・第1話 ゆるくて、ちょっと笑えて、癒される絵

・第2話 イラストレーターを名乗った日

・第3話 美術や創作の道に進む人の背中を押したい




▼インタビュー・編集 小野寺将人(Blog / Facebook / Twitter

2015年、茅ヶ崎市に移住。「エキウミ」の管理人。住宅・不動産サイト運営会社、お出かけ情報サイト運営会社にて営業・企画職を経た後、現在は総合ポータルサイトにて企画職に従事。東海岸商店会の公式サイトの運営や、ハンドメイドアクセサリーブランドm'no【エムノ】のウェブマーケティングも行う。

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