【元香川小学校校長の國分一哉さん #2】これからの時代は「自分の頭で考える」のが大切になる。ところで先生はそれができているか?

(前回の記事はこちら→通知表をやめた校長先生。“「B」評価の子どもは「自分って凡人じゃん」と思っちゃう。”


■テストの点数だけで成績を付けるなんて、プロの仕事じゃない


小野寺(インタビュアー):通知表をなしたら、どうやって評価を付けるのでしょうか。


國分氏:そもそも、評価は日々しているものなんですね。「形成的評価」といわれるやり方で、日々の授業で細やかに評価をしています。


小野寺:それを日常的に伝えていくのでしょうか。


國分氏:はい。直接声がけをしたり、プリントにコメントを入れたり、他にも先生によって様々な方法で行います。通知表がないわけですから、子どもたちにはこれまで以上に日頃から伝えていく必要があるんです。


小野寺:そこなんですが、私は正直、本を読んだとき「スキルが足りていない先生は大丈夫なのかな?」と思いました。


國分氏:それはもっともなご意見で、この改革によって先生のレベルの差が露骨に出てしまう懸念はありました。

ですから、まず先生方が成長していくような意識改革をする必要がありました。


小野寺:先生が成長すれば、子どもの成長に直結しそうですね。


國分氏:はい。プロの先生としてこれからもやっていくなら、この改革をきっかけに先生として成長する道を選ぶしかありません。


小野寺:厳しいですね。


國分氏:先生って簡単な職業じゃないんです。子どもの評価の仕方としてテストの点数だけで成績を付けるなんてプロの仕事じゃない。子どもの良さを引き出す評価の仕方を身につけなければ、プロとは言えないじゃないですか。


小野寺:先生方は狙い通り成長したと思いますか。


國分氏:職員室での会話の質が明らかに変わっていきました。

「この授業どうしたら良いかな」とか「こんな授業したら児童からこんな発言が出てきて」のような建設的な会話が増えたんです。


小野寺:意識が変わったのですね。


國分氏:先生同士はお互いの授業を見れないので、自分の頭で考えて、積極的に高めあう意識がすごく大切。

これからの時代は「自分の頭で考える」のが大切ってよく言うじゃないですか。ところで先生はそれができているか?それができる先生にならないといけないと思います。

■「考える先生」になってもらう


小野寺:通知表をなくすことで、そこまで先生方の意識が変わるものなのですね。


國分氏:意識改革はいろんなきっかけで進んでいて、通知表をなくしたことはその中の一部なんです。いくつか段階があって、最初のきっかけの一つが「教室の配置転換」です。


小野寺:6年生と1年生の教室を隣にして、良い影響を与えあう珍しい取り組みですよね。 (参考:「1年1組」の隣も「1組」 茅ヶ崎市立香川小が教室を配置転換


國分氏:この「教室の配置転換」のとき、すごく良い議論ができたんです。

そのとき先生方の間で「わからないことはやってみるしかない」という価値観が芽生えました。


小野寺:それは大きな出来事でしたね。それ以外の改革でいうと、本に書かれていた「運動会の改革※1」や、「テスト採点の改革※2」も興味深かったです。

※1 運動会の改革:クラス間で競うのではなく、各クラスの自己ベストを目指す形にした。
※2 テスト採点の改革:あえて点数を書かないことで、間違えた問題自体に児童の意識が向くようにした。


國分氏:そういうきっかけごとに考える先生が増えていって、その結果として「通知表をやめてみよう」という改革も進めることができました。


小野寺:考える先生が増えるってすごいことだと思います。


國分氏:10年前と今の教育が違っているように、10年後の教育は違うものになっています。

常に考えている先生は、10年後にも子どものためになる授業をしているだろうし、何も考えてない先生は10年後の子どものためにならない授業をしてしまう。

考えない先生を、考える先生になってもらうきっかけを作るのが校長としての大きな役割だったと思います。


■夢見る校長先生


小野寺:最後に、國分さんの今後の展望について伺えますか。


國分氏:実は「夢見る校長先生」というドキュメンタリー映画が8月4日に劇場公開されるんですけど、そこに出させてもらっていまして(笑)


↓夢見る校長先生(引用元:公式サイト

小野寺:これは明らかにメインキャストの一人ですね(笑)


國分氏:お恥ずかしい(笑)この作品は、私立ではなく公立の学校でも改革ができるというメッセージを伝える内容になっています。


小野寺:子育て世代や、教育関係の方は必見ですね。

國分氏:とても良い作品なのでぜひ見ていただきたいですし、私個人としても今回のエキウミさんのインタビューのように、何か伝えられることがあればお話していきたいなとも思います。

余談ですが、この作品のナレーションが小泉今日子さんなんですけど、昔から大ファンなので、いつかお会いできたらと夢見ております(笑)


小野寺:まさに夢見る校長ですね(笑)今日は大変考えさせられるお話をありがとうございました。


(おしまい)


▼インタビュー・編集 小野寺将人(Facebook / Twitter

2015年に茅ヶ崎に移住し、2017年に「エキウミ」を立ち上げる。地域密着店のネット活用をお手伝いする株式会社KYOEI(キョウエイ)の代表。

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