【ローカルファーストの淺野真澄さん】毎日100人来店!商店街の「空き店舗事業」は、地域事業者へのメッセージ。
(前回の記事はこちら→経済界公認エヴァンジェリストとして「地域にやさしい選択肢」を伝えたい。)
■100人ディスカッション
――― 前回はローカルファーストの基本的な考え方について教えていただきました。今回は具体的なアクションについて伺えればと思います。
淺野 はい。お願いします。
――― 象徴的なアクションとして、2016年の12月から1年間行われた浜見平商店会の「空き店舗活用事業」について教えてください。
淺野 はい。2016年に、私が代表を務める「ローカルファースト研究会」としてなにか具体的なアクションをしようということで、商店街の活性化・空き店舗対策をテーマにしました。
――― 商店街の空き店舗は、全国的な課題ですよね。
淺野 そうですね。空き店舗の活用をする上でなにかお店をやろうと思ったのですが、地域の方から必要とされていないものを作っても仕方がないじゃないですか。
ですので、まずは「ママたちの100人ディスカッション」を行いました。
↓ディスカッションの様子
――― 100人も!それは相当大変だったんじゃないですか。
淺野 5人×20回で合計100人にヒアリングを行い、本当にいろんなご意見をいただけました。
おっしゃる通り、実際にやってみたら本当に大変でしたが、私がたまたま近くに住んでいたのでやりきれたんだと思います。
――― でも逆に、近くに住んでいるからこそ、ママたちに協力してもらうのがキツいっていうことはありませんでしたか。
淺野 たしかに、私自身も子どもがいますし、最初は仕事とプライベートが交わっていくことへの抵抗感はありましたね。
Facebookのアカウントも二つ作って、ローカルファースト用にしたりして(笑)
でも自分ではじめたことですから、代表として覚悟を決めて、どんどん発信するようにしたんです。
――― ふっきれたんですね。実際にはどんなお店ができたのでしょうか。
淺野 本当にたくさんのご意見をいただいたので悩んだのですが、最終的にはハンドメイドとリサイクルのお店にしました。
そうすることで、限られた予算のなかでも皆さんのご意見を全部叶えることができたんです。
――― では、100人に聞いておしまいじゃなく、しっかりと反映させたんですね。
淺野 そうですね。やっぱり空き店舗事業っていうと、世間的にはサロンとかカフェとか、わかりやすい「居場所」系の提案をされることが多いじゃないですか。
でもそれだとよっぽどうまくやらない限りある一部の人たちのたまり場になっちゃって、だんだんとしがらみも出てきたりしちゃう。
私は、せっかくやるなら多世代交流ができるような、誰にとっても楽しい場所にしたかったんです。
↓浜見平商店会の空き店舗事業の様子
■ローカルファーストできるお店
――― 多世代交流。
淺野 はい。例えば地域で過ごす機会自体が少ない30~50代の男性に来てもらうのってすごく難しいじゃないですか。
でも中古のレコードを置いたら、その年代の男性も結構来てくれて。
やっぱり地域の商店街に「ここにしかない!」っていうお店がないと、「ローカル」を「ファースト」したくてもできないですよね。
――― つまり、ローカルファーストにはお店側の努力が不可欠ということですね。
淺野 はい、もちろんそう思います。
実際、いくら「ローカルファーストしましょう」って言われたって、「その理念はわかるけど地域のお店に行きたいところがないんだけど」っていう場合もありますよね。
例えば店主が店の奥にどかっと座っていて入りづらいとか、入ったら買わないと出づらいお店とか。
――― ありますね(笑)
淺野 そういう入りづらくて出づらい店には、たとえ「地域のお店を大切にしましょう」って言われても入りたくない気持ちが勝っちゃうじゃないですか。
もしそんな店ばかりだったらナショナルチェーンの方が気楽だからそっちに行きますよね。
だから、空き店舗事業で私たちがつくったお店は、それ自体が事業者さんたちへのメッセージでもあったんです。
――― なるほど。では地域の人のためにお店を開いたということだけじゃなく、地域のお店にもお手本を示したわけですね。
淺野 お手本というとおこがましいですけど、でもそれぐらいの気持ちでやりました。
毎日ショップフロントに出す商品を変えて、何度来ても楽しい場づくりを工夫したり、真夏も真冬もフルオープンでお店に立って、来てくださるお客さんのタイプによってコミュニケーションを変えながら、来てくれた人同士をおつなぎしたりして。
そうやって入りやすくて出やすいお店を作り上げたんです。
↓地域の方と会話をする淺野さん
――― お店作りもすごいですが、接客術もすごいですね。
淺野 私、実は接客についてはちょっと自信があるんです(笑)
これまでCA(キャビンアテンダント)や、モールのインフォメーションなど接客が必要な仕事をしてきたので、人によって差別をせずにコミュニケーションが取れるよう鍛えられてきました。
あとは私自身が人見知りなので、人見知りの人の気持ちがわかるというか、喋りかけないで欲しいというタイプの人に対しても、心地よい距離感を保てると思います。
――― そうなんですね。ちなみに、そのお店にはどれぐらいのお客さんが来てくれたんですか。
淺野 毎日来る人が30人ぐらいいて、1日平均100人は来ていました。
リサイクル品を出してくれる人が200人ぐらいで、ハンドメイド作家さんが35人ぐらいいたんですけど、やはり皆さん関係者になることでお店にお客さんとしても来てくれて。
――― 毎日100人というのもすごいですが、それだけの人たちを巻き込んだこともすごいですね。
淺野 実際、ローカルファースト研究会だけでは何もできませんから、「自分たちだけではできません」とお伝えして、たくさんの方々に助けていただいたんです。
浜見平の商店会、自治会、地域の主婦の皆さん、NPO法人もったいないジャパンの山本さん、ほかにも本当にいろいろな方に関係者になっていただいて、作り上げていきました。
そして、最終的にしっかり黒字で終えることができました。
↓地域の皆さんとの集合写真
――― 売上もしっかり出されたんですね。
淺野 はい。ただ、お客さんの数や売上が増えることにも手ごたえを感じられたんですけど、なにより嬉しかったのは「ローカルファースト」の考え方が伝わっていく実感が持てた瞬間ですね。
例えば、よく自転車に乗ってお店の前を通る80歳ぐらいのおじいちゃんが、ある時「Local First」って書いてある看板を見て私に「これ、賛成だよ!」って唐突に言ってくれたりするんですね(笑)
――― 唐突に(笑)
淺野 あとはビーサンで散歩中のおじさんが、また突然「お前の考えにおれ賛成するよ!」とか言ってくれたりして(笑)
なんか良いじゃないですか、そういうのって。
そうやって地道に一人ひとり影響を与えられるっていうことが大事かなって思うんです。
――― 地域に受け入れられていることがよくわかるエピソードですね。それにしても商店街の活性化でこれほどの成功事例は珍しいと思うので、これ本になりそうですね(笑)
淺野 本当ですか?では出版関係の皆さま、ご連絡お待ちしております!(笑)
(次回につづく→ローカルファーストを日本各地に広げていきたい。)
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【Think Chigasaki】ローカルファーストの淺野真澄さん
・第1話:経済界公認エヴァンジェリストとして「地域にやさしい選択肢」を伝えたい。
・第2話:毎日100人来店!商店街の「空き店舗事業」は、地域事業者へのメッセージ。
▼インタビュー・編集 小野寺将人(Blog / Facebook / Twitter)
2015年、茅ヶ崎市に移住。「エキウミ」の管理人。住宅・不動産サイト運営会社、お出かけ情報サイト運営会社にて営業・企画職を経た後、現在は総合ポータルサイトにて企画職に従事。東海岸商店会の公式サイトの運営や、ハンドメイドアクセサリーブランドm'no【エムノ】のウェブマーケティングも行う。
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