【STORY】 湘南を愛し、パン職人を目指した人生のチャレンジ


(前回の記事はこちら→素材の持ち味を生かした伝統的な製法で。毎日食べ続けられる、地域にずっと根付き続けるパンを。「B-grotto」


若くして感じ取っていた職人気質。波乗りパン職人、茅ヶ崎へ。


シェフの石井幸男さんは、東京都立川市生まれ。「まさか自分がパン屋を開業するとは。」と言うシェフ。もともとパンに興味があるというよりかは、母親がたまにパンを作っていたこともあり、そのパンが好きだったことがルーツにあるようだ。 学生時代、勉学の時間を作るために朝早くからアルバイトができる環境を捜し求め、立川のパン屋でアルバイトを始める。 具材やドーナツを揚げる仕事がメインで、生地作りにも興味があったが当時はそこまでは至らなかった。やがて、日々の真面目な働きぶりから、店長に就職を勧められる。勧められた職は、営業職や卸し業者の紹介だったため、職人肌を自ら感じとっていた石井シェフは作り手を選択し、その後社員となり、パン職人としての一歩を踏み出す。


その後、立川のパン屋で4年勤めたが、「パン職人としては若かったので修行という感じではなく、日々仕事をこなす状況だった」という石井シェフ。しかし、パンを美しく作る職人だった店長のもと、ただただ学ぶことが多かった。やがて自分で作りたいパンを作りたいという想いが目覚め始めた石井シェフは、決断する。パンを作れるならどこへでも行ける。いつか店を持つなら、立川に勤めながらも湘南まで通っていたという趣味のサーフィンも楽しめる環境にと選んだのが、茅ヶ崎だった。  そして、当時湘南でパン屋といったらと言われる名店、鎌倉山の「ボンジュール」の門を叩く。



衝撃的なパンと巨匠との出会い、新たな修行へ。


「ボンジュール」では多くのスタッフ、仲間に恵まれ、日々切磋琢磨する環境があり、とても刺激的だったという石井シェフ。ある日、同僚とパン屋巡りの話で盛り上がり、色々なパンの本を読み、その中でどうしても気になるパン屋が目に留まった。その店は神戸・三宮の「ブーランジェリー コム・シノワ」だった。


同僚たちと神戸まで視察に出かけた石井シェフは、層が厚めでフレッシュなバター感が広がるクロワッサン、今ではベーシックだが調理した料理をパンに載せるスタイルなどに衝撃と感動を覚える。神戸から帰ってきた石井シェフに、沸々と目指すものができる。憧れを抱き、こういうパンを作りたいというパン職人の魂に再び火を着けられ、家に着くとすぐさま妻の理恵さんにコム・シノワで勤めたいと相談し、コム・シノワにも交渉し続け1年後、念願叶って入社し、神戸・三宮に移住をする。 


「奥さんは反対こそはしなかったが、2人目の子どもがうまれるタイミングだったのもあり、本当に苦労をかけたと思う」と振り返る石井シェフ。楽しかったが、帰って寝るだけ、という生活が続いた。 コム・シノワの土台はフレンチレストランだったため、始めの仕事はランチのパンやケーキをレストランに配送したり、パン用の料理の仕込みがメイン。既にパン職人のキャリアは10年を超えていたのに、また1からのスタートだった。やがて、生地作りの仕事に就けるが、これも10年のキャリアを覆す、まったく違う作り方だった。そのため、B-grottoのパンの作り方はコム・シノワがルーツになっているという。 


パン作りの工程は、粉から生地を作る「仕込み」、それを分割して「成形」し、成形したパンを「発酵」させて、「焼く」。その工程の中で、最終的にシェフ(料理長)が手がけるのは、「仕込み」だったり「焼き」だったり、シェフによって方針は異なる。しかし、コム・シノワのシェフの西川氏から得たものは、何よりもとにかく「パンを大事に扱い、今この香りをそのままお客様に届ける」という事にこだわる、テクニックよりも信念であり思想だった。この思想を受け継いでB-grottoの今があると言いきれる。 



運命的なB-grottoの誕生へ


 コム・シノワでの修行を終え、茅ヶ崎に戻った石井シェフは、再度「ボンジュール」に戻ることとなる。コム・シノワで得た技術はあるが、伝統のあるボンジュールにはボンジュールの作り方がある。「このパンの作り方はこの方がいい、という考えはあって少しモヤモヤはしていた」という石井シェフ。 いつかは独立を考えて、ボンジュールに勤めながら資金を貯え、年に一度、休みを取って、再び神戸までコム・シノワの手伝いという名の修行に向かい、コツコツ新しい技術を吸収し、その力も蓄えていた。やがて、ボンジュールがその歴史に幕を閉じることとなる。これをきっかけに今しかないと思い、独立に踏み切った。


その後、石井シェフは現在の店舗と運命的な出会いをする。 長年親しみ慣れた茅ヶ崎で、雄三通りの海岸からの雰囲気にこだわっていたが、さらには修行先のコム・シノワも地下のお店で、ピンと来ていたという。この物件に惚れ込み、資金を何とか工面し無事開店に至る。 コム・シノワを知っている人からすると、そっくりだね、と言われるほどのお店となった。


 

地域のお客様との距離を近くに感じていたい


B-grottoのお店作りは、全てのパンを見渡せるアイランドテーブルや焼き立てをその場で味わうイートインスペースなど多数あるが、密かにこだわったのは、厨房をガラス張りにしているところだ。 お客様は作り手の姿が見える安心感があり、さらにはシェフ自身もお客様の反応を見ることができることも重視した。「美味しそう!」という声や、「いつもあのパンを買うな」という人もいれば、「パン選びに悩んでいるな」という顔も見ることができる。そのお客様の顔を見て、日々パン作りに反映させているそうだ。


そして、この間口の広さは、いつかはパン教室もできるようにと入り口はフラットに、作業場も広く取っている。地域のお客様との触れ合いを大事に、地域に根ざすという事を大事にしているシェフ。今後の展開が楽しみだ。 


↓厨房を覗くと、パンが作りだされていく様子が見え、忙しいながらも「いらっしゃいませ!」と声をかけてくれる石井シェフ。オーブンからパンを取り出した瞬間を目にしたら、もう買わずにはいられない。 この厨房でパン教室が開催されることが楽しみだ。


↓店内のイートインスペースの横の壁面はアートギャラリーとして地域のアーティストに提供できるようにしている。さまざまな角度からお客様との接点を増やし、声を聞きたいという、パン作りだけではないシェフの想いが全面に現れている。


↓店内もどことなく可愛らしい小物を配置して気分をワクワクさせる。本棚にはお子様向けの本や、パンの本があり、イートインスペースでゆっくりくつろぐこともできる。



まだまだ続く石井シェフの夢。パンを通じて地域の活性化をしたい。


過去これまで、幾度の修行を重ねてきた石井シェフ。現在も一人で焼き手を担いながらも、他店の取り組みやパン作りなどの勉強を欠かさず、地域のパン屋としてもっとやるべきことがあるのでは、と感じている。パンに関わるイベントへの出店や、地域のマルシェ出店、商業施設内の生産者直売店、幼稚園のバザーなど、精力的に出向いているが、それはB-grottoを知ってもらうことだけでなく、職人としてその地域の皆さまにパンのある生活を楽しんでもらいたいという想いと、茅ヶ崎を代表するパン屋として茅ヶ崎を知ってもらうために取り組んでいるという。他にも、全てとはいかないが地域の食材をなるべく使うことや、茅ヶ崎のお土産になるような焼き菓子の開発など、シェフの夢はまだまだ続く。


とにもかくにも、お客様への愛と、茅ヶ崎への愛。シェフのパンには愛情がいっぱい込められている。 そんなB-grotto、内に秘めた熱い想いを持つシェフに触れに出かけて、美味しいパンを味わって欲しい。


(おしまい)





↓B-grotto

住所:茅ケ崎市東海岸北1-5-4 サザングランドハイツB1F/TEL:0467-81-3994/営業時間:6:30~18:00/定休日:日曜+月曜不定休/駐車場:あり(店舗横1台、商店街駐車場)/イートイン:あり(14席)/Instagram

※こちらは取材時点での情報です。現在は異なる場合があります。 




▼インタビュー・編集 宇野知行

茅ヶ崎生まれ、茅ヶ崎育ち。食関連のサイト運営会社にて飲食店の繁盛の秘訣を探り続け、飲食店向けの情報誌の編集、マーケティング、販促支援などに従事。料理だけでない飲食店の魅力や楽しみ方を伝えるのがポリシー。週末ライター時々、釣りバカ。


▼インタビュー 小野寺将人(Facebook / Twitter

2015年、茅ヶ崎市に移住。「エキウミ」の管理人。住宅・不動産サイト運営会社、お出かけ情報サイト運営会社にて営業・企画職を経た後、現在は総合ポータルサイトにて企画職に従事。ハンドメイドアクセサリーブランドm'no【エムノ】のウェブマーケティングも行う。

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